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干潮とファンファーレ

干潮の時
わかめを取りに行った
腰まで浸からないとわかめは取れない
すぐそこにある黒くないひじきをひきちぎる

先っぽのひじきが柔らかいのだよ
すぐそばでわかめがりをしていたじいちゃんが言う
乾涸びる前のひじきは水で潤んだ草色で
波に飲み込まれては吐き出されていた

軽い砂浜の世界は乾いた世界で
風に吹かれて砂紋を描き
重い海底の砂の世界は湿った世界で
海の流れで砂紋を描き

軽い世界は楽しい
と友は言う
重い世界は苦しい
と人は言う

どこかでファンファーレが鳴っていたのだ
世界のおわりとはじまりのような
砂の重さと海の重さが釣り合った世界の
赤い太陽と黒い津波の10年前





by akikomichi | 2021-03-06 02:17 | 詩小説 | Comments(0)