2021年 02月 18日
焼き杉
粉雪が降り出した
自分より少し大きくて
手のひらくらい幅を利かせた杉の板
三枚で三角柱にして荒縄でしばる
その三角形の空洞に
茅の袴を詰め込んで
火をつける
狼煙が上がると
火が駆けずり回り
内側だけがどす黒くただれていく
もう耐えられないと火がてっぺんから首を出すと
砂時計のように
上と下をひっくり返した火時計は
杉の記憶を黒く塗りつぶし
杉の板を生半殺しにした
老婆の肌のような土壁を
黒光りする鎧板となり
守るのだと
言い聞かせながら
冷水をぶっかけては
火あぶりとなった
魔女狩りの後に
また新しい三角柱の生贄を捧げるように
杉の板を焼き
焼き杉を作るのだった
by akikomichi
| 2021-02-18 00:43
| 詩小説
|
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