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油抜き女天国

竹の油抜きをした。

囲炉裏の火を絶やさずに。

自分の背の高さの倍ほどの竹を炙りながら、少しづつずらしながら、布で油と煤を拭き取りながら、焦げないように、強くなるように。

色鮮やかな若々しい青い竹から、脂分と水分が抜けるごとに淡い薄みどり色に乾きながら表皮が密になっていく。

虫がみずみずしく柔らかい若竹を好むのならば、この油抜きをした竹は、我らの目にとてつもなく好ましくなっていく。

東屋のような茶室の六角形の杉皮葺の屋根の上に長い間、収まるように、手間暇をかけて。

最近は竹や棟木などに注入剤を工場で施したものを、屋根の上の雨風、天道さんの熱い日差しにも耐えられるように使うことが多いのだが。

今回、我々はあえて、自宅にある囲炉裏で手間暇をかけて、一つ一つに宿る魂のようなものを磨きあげるように、赤子の腕や足をなで摩るように、磨き上げていった。

人の手を必要とする一つの試み。

どう変化していくのかを見守りつつ、昔の人がやっていたであろう手間暇を惜しまずやっていく覚悟のようなものをも、生活の中にある囲炉裏で毎日、我が身と我が作り上げるあらゆるものに、注ぎ込んでいけるように。

魂のようなものは手の先から育まれるのだというような、美しい色艶をいつまでも触っていたいような、なめらかなつやつやとした竹肌を愛でる。

時間と火がつくりだす美しいてかりは我々の希望の光。

by akikomichi | 2020-09-19 08:40 | 詩小説 | Comments(0)