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「転げ落ちた」

夢に見たように暗闇と一緒に転げ落ちた
ビール箱の中身がなかったから
あんまりに軽やかにビール箱と一緒に転げた
足場はくっしょんになってくれたが
踏み台にもなって
そのまんま庭に転げ落ちたのだ
暗闇の痛みから目が開けられない
息ができないのは暗闇のせい
左の首から肩にかけて
三回転半にねじれながら
転げ落ちたのだ
水だったら着地失敗
庭だから暗闇に着地
ご安全に

5番と書かれた
ヘルメットが守ってくれたけれど
頭の中の暗闇と
めくるめく昼の光のような
首と背中と胸骨の電光
痛みの中
死んだ気がしたのだ
動かないかもしれない死体
胸骨のきしみは
息を殺してという
面をして
能舞台に上がるように
横になり死に体となりながら
茣蓙担架で運んでもらった先の救急車
夢の中でどうしようもなく泣き出すように
じわじわと溢れていた
涙をふくように
救急隊員が白い紙をくれた
白紙にうつしこまれた
無色の痛みを丸めて戻す
たどり着いたのは
病室の片隅
外は嵐も近い
海も近いというのに
痛みと離れられない
暗闇と和解するように
天井を向いたまま
また夢を見るように
眠りに転げ落ちた
転げ落ちる二日前に見た夢の中で
首を触られたのを思い出しながら
ご安全に
ご安全にと触られたようで
無言のご忠告のおかげで
なんとか生きていて
ご安全に
ヘルメットのおかげで
何事もなかったように
動き回れるようになり
転げ落ちた先を
今も見ているのだ












by akikomichi | 2018-08-30 18:59 | 詩小説 | Comments(0)