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バフマン・ゴバディ監督映画『国のない国旗』と『国境に生きる〜難民キャンプの小さな監督たち〜』

監督: バフマン・ゴバディ/Bahman Ghobadi
1969 年イラン生まれ。短編ドキュメンタリー映画の制作を経て長編映画デビュー 作、またイラン初のクルド長編映画となった『酔っ払った馬の時間』(1999 年)で カンヌ映画祭カメラドール賞を受賞。その後クルド人の生活等を描く『わが故郷の 歌』(2002 年)、『半月』(2006 年)を発表。イラン政府の許可を得ず『ペルシャ猫 を誰も知らない』(2009 年)を発表したことが問題となり亡命。その後『サイの季 節』(2012 年)を発表。本作は最新作に当たる。


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国のない国旗というのは、いわゆるクルドの国旗のことであろうが、クルドの歌を歌って。と歌うたいの女性に答えて歌う難民キャンプに避難している子供たちの歌そのものが、「国」を表しているようにも思えて、なんだか、繰り返し歌えることにより、慰められはするものの、実態のない、つかみどころのない、幻惑された「国」を思い、切なさ、哀しさを通り越して、憂鬱になった。

成功するために歌うかつてイラン・イラク戦争時に、難民となったが、北欧に移り住むことができた、クルド系の美しい有名な女性歌手(ヘリー・ラヴ(Helly Luv)?)。
難民になったことさえ自分の喜びの日々にしてくれた愛する女の人に会いたいがために飛行機を作った男性。報われることはなかったが。

二人とも、何かしら、ある希望を持つ。ということで、そこから抜け出そうとして、実際、抜け出した人たちであった。


そうして、ゴバディ監督は、現実を見ている。できるだけ虚構ではない。妄想でもないものを捉えようとしている。

難民キャンプに慰安の為か、映画上映会をする男がいたが、映画の中の戦闘シーンを尻目に今そこで行われている、現実の、自分たちの家の方向を爆撃する、目の前で破壊されていく光景を見に出て行ってしまう子供たち。
映画には、それくらいの飽き飽きする非現実的な虚構しか作れないという自虐をこめてか。

それでも、ゴバディ監督は、希望の映画を作ったのだと思った。

報道やわかったようなことをいうだけの芸術ごかしでは決して得られない、一人一人の思いとともに、一人一人の違った顔のある悲しみを丁寧に拾い上げていくのだ。


ところで、ゴバディ監督の、素晴らしいところは、決して悲しみに打ちひしがれようとはしない方法を探しているところである。

どんなに残酷な、どん底の、困難な生活にあったとしても、それすらも糧にするような生きる方法のひとつを伝えていくのだ。

難民キャンプにいる子どもたちに、小さな監督となってもらい映画を作る。一緒に寄り添いながら作る。

歌を作る方法も、ミュージックビデオを作る方法も、飛行機を作る方法も。

何もないと思われた、そこから自分の未来を作っていった人を道標にして。

ただ聞けとばかりに、見せつけ、押し付け、なおかつ金まで取るのではなく、一緒になって、作っていくのだ、これからを。
by akikomichi | 2016-09-23 17:05 | 日記 | Comments(0)