2014年 07月 17日
しかしデューリーは表面上の応援でお茶を濁すことはしませんでした
たとえば政府が立ち上げた『輝く女性応援会議』といった言語感覚に一抹の不安をおぼえるのは、
◆シビアな交渉でカツラを脱いで笑いを取ったモー・モーラム
そんな現状の対極から、女性が真に権力に近づくためにはどうすべきか語った人がいました。
イギリス労働党の政治家、モー・モーラム(1949-2005)。脳腫瘍に侵されながらも、
その人気は本国では絶大なもので、ジュリー・ウォルターズ主演で伝記ドラマが制作されるほど。
その彼女が回想録『Momentum』の中でこう語っているのです。
「女性だけの省庁ができれば、それは素敵なショーウインドーの飾りつけにはなるだろうし、
もし女性が本当に物事を変えたいと思うならば、男を取り込むことが重要」。
一歩間違えれば自らの命を落としかねないような状況で、激しく対立するカトリックと
それでも彼女はいかなるときもユーモアを忘れなかったといいます。放射線治療を受けたため
しかしそのユーモアは、女性にとってあまりにも悲しく身を切るようなものではなかったで
“女傑”と呼ばれ、言うことを聞かない男性議員にはFワードはおろか、「頭突きをくらわせてやる」
髪の毛を失うこと。男性である筆者にはそれがどれだけ重大なことであるか、やはり分かり
◆「健常者は障害者のことなど分からなくて結構」
それを曲にしたのが、モー・モーラムが愛するロックミュージシャンのイアン・デューリー
彼もまた7歳のときに小児麻痺を患い、その後遺症から左半身の自由を奪われていました。
⇒【YouTube】Ian Dury & The Blockheads 「Spasticus Autisticus」 http://youtu.be/6isXNVdguI8
しかしデューリーは表面上の応援でお茶を濁すことはしませんでした。
So place your hard-earned peanuts in my tin
And thank the Creator you’re not in the state I’m in
(ほんの小銭でいいから 恵んでくれやしないか
そんで俺みたいじゃなくてよかったと神様に感謝することだ)
そう言って、健常者は障害者のことなど分からなくて結構、と歌います。発売当初、なぜか
2000年3月27日に亡くなったイアン・デューリーの葬儀にも参列したモー・モーラムは、
⇒【YouTube】Ian Dury & The Music Students 「(You’re My) Inspiration」 http://youtu.be/r2rxUJMon10
「You’re my inspiration, my reason and my rhyme
From the first impression until the end of time
I’m telling you I love you, what else can I say?
‘Cause you’re my inspiration in every single way」
それは女性らしいロマンチックな一面が凝縮されたワンシーンだったように思います。
⇒【YouTube】Elton John 「Belfast」 http://youtu.be/zeFpvZJcJn8
(ベルファストは、イギリス-アイルランドの和平合意が結ばれた北アイルランドの都市)
<TEXT/石黒隆之 PHOTO/David Fowler>