「今年の蛍」


久しぶりに散歩をした。
暗い夜道を歩いていると星がくっきりと見えてきた。
山の星は近くに見える。
しばらく歩いていると道端に
今年初めての蛍を見た。
この時期に見れるとは思ってもいなかった。
光っては消えていくほのかな明かりにつられて立ち止まった。
これからどうやって生きていけばいいのだろうか。
心の中で蛍に尋ねてみたくなった。
光っては消えていくほのかな明かりは
何も言わずにただそこにいた。



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by akikomichi | 2017-07-31 22:42 | 詩小説 | Comments(0)

「最後の試合に」

高校生最後の剣道の試合に臨んだ倅であった

体が心を通り越して動くような

気持ちが重心になっているような

それでも体の動きは自由の中にあった

一人抜き

二人抜き

切り込んでいくその体は自由そのものであった

凄まじい風を作るような自由

生の喜びの中 動き回るような

あそこまで自由に動けるようになった倅の凄まじい努力を思うと

母は涙が自ずと出てきて止まらず

いい試合であった

面白い友と出会えて

良き師に出会えて

幸せな時をもらって

あなたが自分が生まれてきてよかったと思える時を

あなた自身が自分の力で作っていることに

心から感謝する




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by akikomichi | 2017-07-28 17:34 | 詩小説 | Comments(0)

「そこが抜ける」

そこが抜けたのは、小走りで走った日のこと。

古い板に自分の足を飲み込まれた。

足が入った先には。

刻刻の刃の欠けた鋸のような真っ暗な穴が口を開いていた。

急いではことを仕損じる。

今日、その穴をふさいでいただいた。

焦らぬように、ゆっくりといこうという戒めのような新しいそこ。

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by akikomichi | 2017-07-25 20:51 | 詩小説 | Comments(0)

「蛇の抜け殻」

蛇が茅葺屋根にいたという
大きな腹をしていたという
ことりがいなくなった
丸呑みにされたのだろう
街中のビルでは三、四階はあろう高い屋根の上に
蛇が息を潜めて生きている
ことりを狙って

蛇の抜け殻があった
死んだわけではないのだ
抜け殻になっただけである
その生身はきっと
どこかで生きながらえている

帰り際
小さな蛇が道を横切っていた
脱皮した蛇ではなく
魂だけの
まだ生まれたてのような
細く小さな体をくねらせて
草薮に消えていった




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by akikomichi | 2017-07-20 01:24 | 詩小説 | Comments(0)

育ち盛り

坊主から のびた毛並みのツヤツヤと 育ち盛りの倅の髪の毛
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by akikomichi | 2017-07-17 00:43 | 短歌 | Comments(0)

黒い子猫が道を横切った日
白鴉がスクリーンに映し出されて歌っていた
何かの萌しのように
白黒の子ヤギが道端の草を食んでいた
白と黒が混じり合う時
緑の恵みの時を迎えるように
大雨ののちの
嘆きの後の
小さな萌しを見るように
ただ
そこにあった



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by akikomichi | 2017-07-09 18:52 | 詩小説 | Comments(0)

冬目 夏目

冬目がち 薄く濃く刻まれた時  夏目のようなあつさとともに
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by akikomichi | 2017-07-08 21:11 | 短歌 | Comments(0)

夏目と冬目

白川村とほぼ同じ こて のことを、岐阜県揖斐郡(いびぐん)本巢町神海では ていた と言っている。
かい型で、材料は けやき である。
ここでは めなし と言って、こて型の表面を鉋をかけたりして正確な平面にして使用しているが、これにはわら縄巻かないというから、一段と精密な仕上げを期待している こて ということがわかる。
つまり、白川村のようにわら縄をまくと、能率的にたたけるが、それほど正確な平面性は得られないで、細かいでこぼこが残る。
めなし といわれるような正確な平面を持った板で叩き揃えれば、それなりに平面性も正確になる。
その代わりに縄のような滑り止めもつかないので、どうしても滑りやすく能率がよくなく、叩く力も余分なものが必要になってくるということになる。
この めなし も使用しているうちに板の 夏目 が減ってきて、自然と 冬目 が浮いてくる適度な滑り止めができるようになってくる。


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※ 年輪を見ると交互に厚さの薄く色の濃い層と、厚く色の薄い層が綺麗に順番に重なっているのがわかる。
  前者を 冬目 といい、後者を 夏目 という。


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by akikomichi | 2017-07-08 21:01 | 日記 | Comments(0)

「桜桃の味」を忘れてしまっていた。

アッバス・キアロスタミの映画。

死に場所を探して、死を下すものを探して回る男の話。

はげ山の坂道の途中に穴を掘って、そこに横たわる男。

そこから夜が更けていくのを眺めて、返事をしなかったら、穴に土をかけてくれるものを、朝まで待つために。

その嘆き。は、ひっそりと、生きているように見えながら、その実、死んでいるものを作る剥製屋が土をかけに来るのを待つために。


奥底に寝転がった「桜桃の味」の記憶を呼び起こすために。

現実の、嘆き続ける死よりも、桜桃の味を忘れないように、生きるように。

あの残されてしまった可愛い子に桜桃をあげたのかもしれない。

笹の葉が雨で揺れて、濡れて、滲んでしまった、七夕の短冊に書いた見えない思いのように。

生きて桜桃の味を忘れないように。

あの小さなリボンのよく似合う可愛い子が生き生きと生きるように。

甘い桜桃の味を忘れないように。





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by akikomichi | 2017-07-07 21:21 | 詩小説 | Comments(0)

桜桃の味

桜桃の味を忘れてついえたの 穴を掘りつつ空を見る夜
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by akikomichi | 2017-07-07 20:06 | 短歌 | Comments(0)