カテゴリ:詩小説( 242 )

杏の木のしたには

杏の木のしたには
丸々とした杏が転がっていた
拾って皮のまま食べた
ほのかに酸っぱい実の後から
日に照らされた甘みが
ざらついた皮に張り付いているのを口にほおばりながら
考えていた

アフリカ出身の方はりんごは種まで食べるとお聞きした後のこと
なぜ我々は皮をむくのか
皮をむくようになったのか
考えていた
そのままの魂の美味しいところをべろりと剥がしているような
そのままの魂の種を吐き出してきたような
我々であったが

それでも
杏の種は頑なすぎて飲み込むことはできなかった
杏の木のしたには口があるというのに
我々は飲み込むことができずに
そのまま大地に
その魂を返した



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by akikomichi | 2017-06-15 23:25 | 詩小説 | Comments(0)

黒と赤と

ラーメンを先輩方と食べに行った 
焦がしニンニクの入った黒をいただく
赤は辛いという

そういえば
現場からの帰り際
道の向こうで交通規制がかかっていた
でかいトレーラーがUターンをしていた
赤い消防車が集まっていた
火事を捉えようとカメラが来ているようだった
黒煙は見えなかったけれど
駆けつけたサイレンの音は現場にも聞こえていた
以外と近くであったことに驚く
高速から赤いランプがくるくると回っているのが見えた

黙々と食べながら
美味しいと思いながら
どこからかほろ苦い味がしてきた
どうか
ご無事でありますように
と思うことしかできないが
器の隅に溜まった焦がした後の
黒いスープの上澄みを啜りながら
どうかどうかと思っていた




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by akikomichi | 2017-06-15 21:40 | 詩小説 | Comments(0)

こじ開け

こじ開けでこじ開けたヨシの奥には竹のあり
みちひもをとおし
みちひもでみちぎをしっかりと男結びで結びつけるため
一つ一つの繰り返しが
一つの屋根を作り
一つのうちを作る
一つが全てに全てが一つになる
というのは
そういうことなのかもしれない
一つ一つで成り立っていくもの
そういうこうとに心血を注ぐこと



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by akikomichi | 2017-06-12 20:42 | 詩小説 | Comments(0)

「カラスと差しヨシ」

初めて引き出しもののカラスを使いヨシを引き出した。

それから、差しヨシをした。

嬉しかった。

最初の一歩であった。

黒い烏が久しぶりにやってきて近くでないていた。

なんだか余計に嬉しかった。


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by akikomichi | 2017-06-09 21:21 | 詩小説 | Comments(0)

暗闇の中
廊下を右足を引きずりながら歩いて転倒した父

右足と右手から転がった
右半身不随の父

転倒・つまずきの可能性あるところ
足元・手元注意

と言う文言を
一日の注意事項として毎日書き続ける現場の中

父の現場において
一日の注意事項が暗闇の中つまずいた

あと一年は生きるか否か
父は電話の向こうの暗闇で笑いながら言う

あなたは暗闇でもつまずいても
笑いながら生きてきたのだから

その暗闇の重みに耐えられるように
転倒・つまずきには注意


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by akikomichi | 2017-06-07 22:22 | 詩小説 | Comments(0)

沢蟹の横歩き

雨の中 
杉皮の作業を終えて 
休み中
沢蟹 足元 横歩き 
両手鋏のこの蟹の
触覚のような目ん玉の
こちらを向いて横歩き
杉皮切った鋏ほど
でかくはないがなかなかの
挟み具合の鋏もち
さわさわ 目の前 横歩き
雨つぶ 避けて 横歩き
沢蟹と目が逢うたのだ
雨の中  






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by akikomichi | 2017-06-07 21:37 | 詩小説 | Comments(0)

骨と肉体

骨になる前に肉体を動かしていく方が良い
骨だけでは動けなかったものが
動き回れるようになったのは肉を持ったからでもあり
動き回るばねを持つ肉こそが骨を守り続けていたのだ
それでも
聞く耳をもたず
骨になるまで嘆くものよ
あなたもそろそろ嘆き疲れはてたであろうが
最後まで
骨の髄が空になるまで
骨になるまでカラカラと嘆き続けるのだろうが
骨はもう自らの意思で動きはしまい
ただそこで掘り起こされるのを待っているだけなのだ

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by akikomichi | 2017-06-05 16:55 | 詩小説 | Comments(0)

竜巻のような

煙風巻きあげ渦巻き舞い上がる 
竜巻のようなものを見たまひる
鳶が丘の上を舞いながら渦を巻いていた
皆がめを回すような
めくるめくまひるの暑さだ

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by akikomichi | 2017-06-04 20:59 | 詩小説 | Comments(0)

七島藺(シチトウイ)

七島藺(シチトウイ)は庶民のものであったという
今は行き渡るほどなく貴重なものになったという
七島というのはトカラ列島のことだという
藺草(イグサ)の仲間ではあるが
柔道の畳にも使われるほど丈夫であるという
比較的暖かい場所で育つもので
沖縄などではマングローブの近くにも生えているという
暑い日差しにさらされて
強度を持つようになったのだろうか
寒いところの木々草々は美しくするりと偲びながら立っているような
暖かいところの木々草々は伸びやかにゆるりと立っているが強靭な図太さがあるような

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by akikomichi | 2017-06-01 22:44 | 詩小説 | Comments(0)

ささ葺きの家

ささ葺きの家があるという
ささで葺くということを
知らなかった
茅 よしに限らず
いろいろな素材を葺くことで
いい塩梅のところを手探りしながら
今の形になっていったのであろうことが
想像できる


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by akikomichi | 2017-05-31 22:05 | 詩小説 | Comments(0)