カテゴリ:詩小説( 246 )

「今年の蛍」


久しぶりに散歩をした。
暗い夜道を歩いていると星がくっきりと見えてきた。
山の星は近くに見える。
しばらく歩いていると道端に
今年初めての蛍を見た。
この時期に見れるとは思ってもいなかった。
光っては消えていくほのかな明かりにつられて立ち止まった。
これからどうやって生きていけばいいのだろうか。
心の中で蛍に尋ねてみたくなった。
光っては消えていくほのかな明かりは
何も言わずにただそこにいた。



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by akikomichi | 2017-07-31 22:42 | 詩小説 | Comments(0)

「最後の試合に」

高校生最後の剣道の試合に臨んだ倅であった

体が心を通り越して動くような

気持ちが重心になっているような

それでも体の動きは自由の中にあった

一人抜き

二人抜き

切り込んでいくその体は自由そのものであった

凄まじい風を作るような自由

生の喜びの中 動き回るような

あそこまで自由に動けるようになった倅の凄まじい努力を思うと

母は涙が自ずと出てきて止まらず

いい試合であった

面白い友と出会えて

良き師に出会えて

幸せな時をもらって

あなたが自分が生まれてきてよかったと思える時を

あなた自身が自分の力で作っていることに

心から感謝する




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by akikomichi | 2017-07-28 17:34 | 詩小説 | Comments(0)

「そこが抜ける」

そこが抜けたのは、小走りで走った日のこと。

古い板に自分の足を飲み込まれた。

足が入った先には。

刻刻の刃の欠けた鋸のような真っ暗な穴が口を開いていた。

急いではことを仕損じる。

今日、その穴をふさいでいただいた。

焦らぬように、ゆっくりといこうという戒めのような新しいそこ。

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by akikomichi | 2017-07-25 20:51 | 詩小説 | Comments(0)

「蛇の抜け殻」

蛇が茅葺屋根にいたという
大きな腹をしていたという
ことりがいなくなった
丸呑みにされたのだろう
街中のビルでは三、四階はあろう高い屋根の上に
蛇が息を潜めて生きている
ことりを狙って

蛇の抜け殻があった
死んだわけではないのだ
抜け殻になっただけである
その生身はきっと
どこかで生きながらえている

帰り際
小さな蛇が道を横切っていた
脱皮した蛇ではなく
魂だけの
まだ生まれたてのような
細く小さな体をくねらせて
草薮に消えていった




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by akikomichi | 2017-07-20 01:24 | 詩小説 | Comments(0)

黒い子猫が道を横切った日
白鴉がスクリーンに映し出されて歌っていた
何かの萌しのように
白黒の子ヤギが道端の草を食んでいた
白と黒が混じり合う時
緑の恵みの時を迎えるように
大雨ののちの
嘆きの後の
小さな萌しを見るように
ただ
そこにあった



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by akikomichi | 2017-07-09 18:52 | 詩小説 | Comments(0)

「桜桃の味」を忘れてしまっていた。

アッバス・キアロスタミの映画。

死に場所を探して、死を下すものを探して回る男の話。

はげ山の坂道の途中に穴を掘って、そこに横たわる男。

そこから夜が更けていくのを眺めて、返事をしなかったら、穴に土をかけてくれるものを、朝まで待つために。

その嘆き。は、ひっそりと、生きているように見えながら、その実、死んでいるものを作る剥製屋が土をかけに来るのを待つために。


奥底に寝転がった「桜桃の味」の記憶を呼び起こすために。

現実の、嘆き続ける死よりも、桜桃の味を忘れないように、生きるように。

あの残されてしまった可愛い子に桜桃をあげたのかもしれない。

笹の葉が雨で揺れて、濡れて、滲んでしまった、七夕の短冊に書いた見えない思いのように。

生きて桜桃の味を忘れないように。

あの小さなリボンのよく似合う可愛い子が生き生きと生きるように。

甘い桜桃の味を忘れないように。





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by akikomichi | 2017-07-07 21:21 | 詩小説 | Comments(0)

「蛇の疑問」

昨日のこと。

作業場にて、杉皮の束を作るために軽トラックの置いてあるところから杉皮の置いてある奥の方に歩いて行こうとしている時。

坂道の途中で、蛇が腹を見せて息絶えていた。

はてなまーくのように肢体を曲げて、全身全霊の疑問がとぐろを巻いているように、そこにあった。

はげしい雨が降り出した。

携帯からも、地域の放送からも、警戒警報が鳴り響いた。

子供の頃、父親の仕事の関係で暮らしていた、イランで初めて聞いた、イラクから爆撃機が飛んできた日の警報を思い出していた。

あの日は、蒸し暑かった。

夕方のことであった。

花火のように流れ落ちていく、赤い爆弾を初めて見た日。

人が死ぬことを前提にした、ミサイルの雨が花火のように点々と流れ落ちた日。

私たちは、何をしているのだろうか。

死ぬために生きているのだろうか。

生きるために生きているつもりで、心の奥そこでは、自分が死ぬのを、坂道の途中で、待っているのだろうか。

蛇は全身全霊で、死をもって、その疑問を形にしていた。










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by akikomichi | 2017-07-06 08:37 | 詩小説 | Comments(0)

露柱 氷のけたに 雪のはし 雨のたるきに 露のふき草


屋根をぬう縄ははりなわというが、羽茂町小泊では、はりなわを作った後、はざに張って伸ばしておく。
使う時に伸びないように、伸びるだけ伸ばしておく。
水をつけたりすると効果があるという。
真野町浜中では庚申(かのえさる)の夜、てなわをより、とっておき、棟をくるむ時に使うと良いという。
その時、必ず水むすびにしなければならない。
角(つの)結びだといけない。火という字の形になるからという。
水むすびというのは、縄をまず花むすびにして、両方に輪を作った後、その輪にハサミを入れて切り離しておくことである。
これもひたすら、火を恐れての仕業ということができる。
佐渡では火を極端に恐れるところがある。
畑野町宮川では柱立て(建前)のことをすだちといい、これが済むとすぐ、昔は屋根葺きに入ったという。
ふきあがると棟に酒、するめ、昆布を供える。
するめは焼いたものはいけない。
屋根葺き道具も水という字の形に並べて供える。屋根に上がる供物は煮ても焼いてもいけない。
必ず生のものを備えなければならないばかりか、終わって下げた酒までもおかんしてはいけないという。
冷酒で飲まなければならない。
酒、供物、屋根葺き道具が備えられると親方(屋根棟梁)によって、

露柱 氷のけたに 雪のはし 雨のたるきに 露のふき草

と唱える。



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by akikomichi | 2017-07-03 14:19 | 詩小説 | Comments(0)

紫陽花

紫陽花のみずみずしいほど青い空
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by akikomichi | 2017-06-25 20:56 | 詩小説 | Comments(0)

茅葺屋根廻り

今日は雨で現場の仕事ができず
かつて親方と先輩方が仕事をされてきた
茅葺屋根を拝見しに伺う
親方や先輩方がされていたとは知らないまま
見ていた茅葺屋根が多く愕然とする
いつもそばにいるだけで癒されていたものを
作ってきた方々であり
そこに住む人を守る仕事であり
そこに住む人も守り続けている暮らしを
支え続けているのである
いいものを見せていただき
残していただき
心から感謝する
見てみたいと思っていた老松神社も今日拝見できた
兜のような屋根に強く惹かれた
その両脇にある老木が
まだ生きてじっと見守るように立っているのが殊の外いい
昔からそこにあったのであろうことを思うと
なおのこと愛おしくなるものである




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by akikomichi | 2017-06-24 20:26 | 詩小説 | Comments(0)