カテゴリ:詩小説( 242 )

『蛍日記』

6月17日 水曜日 曇り時々雨。
21時30分。

蛍、今日も翔ばず。
見当たらず、なだけか。
ずっと見ていた方が、今日は見当たらないね。
とおしえてくれた。

しかれども、今年の蛍はよい蛍であった。
色々な場所に翔んでいってしまったようだが。
色々な場所で光り続けてくれた。

そういえば、今日は、蛙もないていなかった。
梅雨だというのに。

帰り道、近所の酒屋さんが光っていた。
一度は店じまいをしたのだが、久しぶりに店を開けたという。

近所の人が角打ちに来るんよね。
やっぱり開けてくれんねっていうんよ。

と おいちゃんは笑った。

酒と、あとは、たばこやね。
今、おいとるのは。

蛍族 ついえたと思ったら またついた。

ということか。

ちょうど梅をいただいたので、ホワイトリカーと瓶をさがしていたのだが、近所にはなく、梅ジュースをとりあえず作ることにし、折角の再開を祝うように、ささやかながら、缶ビールを買って帰った。

梅を氷砂糖と穀物酢で混ぜて、梅ジュースの原液を仕込む。
夏まで待てるだろうか。

久しぶりのビールはうまかった。



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by akikomichi | 2015-06-17 21:42 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月16日 火曜日 雨のち晴れ。
21時30分。

今日は暑くなった。
蛍もでてくるかとおもわれたが、見当たらず。
ゲンジからヘイケの時代へ。
大きなものから小さなものへ。

ゲンジは身体がヘイケより大きく、一匹の雌が卵を生む数も500から1000と多い。
ヘイケは卵を100前後生むという。
黄色い卵が幼虫になるのに、黒く色づく紐のようにみえる。
それが大きくなるにつれて、ゲジゲジみたいな足が幾つもあるのが見えてくる。
脱皮するとき一瞬白くなる。
それから、また黒く色づき、太く大きな紐のようになっていく。
いきものの進化を一年を通して見ているような。

ふと気づくと、左腕に虫がとまっていた。
蛍ではないが、ここにもいきものがいるよというように、じっとつかまっていた。
光らなくとも生きている。




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by akikomichi | 2015-06-16 21:58 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月15日 月曜日 晴れ。
21時30分。

蛍が光るのを待つ人、一人、二人おり。
その後、一人と小さな猫。

蛍の季節も終わりに近づきつつあるのか。
雌が卵を生んでいるのをみたという。
三角形のおしりのある部分からぽとりと産み付けるのだという。
黄色い卵。
千匹、生むものもあれば、5百匹、生むものもあり。
数の桁が違うのだ。


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by akikomichi | 2015-06-15 22:32 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月13日 土曜日 曇りのち雨。
8時。

こどもたちとおやごさんと蛍観察。
何匹かが、互いに光り、響きあっていた。
人につられて、光る蛍。
今日まで生きた蛍の光。

蛍は東日本では四拍子。
西日本では二拍子で光るけいこうがあるらしい。
と、蛍の先生が教えてくれた。
西日本の蛍は、せっかちなのだ。

はじめて蛍を見た方もおられた。
こどもたちはなおさら。

ところで。
今年は、ちびっこ蛍劇団旗揚げ。
ちびっこ蛍がきらきら光る。
いとおしいちびっこ蛍。
ゲンジとヘイケと幼虫さんたち。
また来年もあいに来て。


10時。
せがれと蛍観察。
蛍が三匹、三角形を描くように光る。
たくとをふるう蛍の光、冴えている。






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by akikomichi | 2015-06-13 23:01 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月12日 金曜日 晴れ。
21時。

蛍一匹、人一人に出会う。
人は人生を語り。

今年、シルバーになるんやけど。
60歳になる手前まで、スーパーで働いとったと。
昔は店で、ばあちゃん、じいちゃんにいつもこえかけて、名前も知らんけど仲が良かったと。
今は、なんかつめたかよねえ。
今は四人の子どもが巣立って二人だけになったと。
今日は一人で蛍ば見に来たけど、
連れ合いといるより蛍に会いに来たほうがよかとよ、ははは。

蛍の生が終わるように、人の人生の語りも終わり。


瞬きしている間にもう、この歳になったんやね。


蛍がまた、光りだした。

人がまた一人やってきた。


なんばしようとね。
蛍はおるね。


近所の人だった。


一匹おったけど、休み休み光りようみたい。


そうね。
あの水辺で光りようのが見えんとね。
おれは片目が悪いとに、見えるばい。ははは。


わからん。わからん。


そいじゃ、おれはぱとろーるにいってくるけん。

また二人になって、蛍を探していると、人が一人やってきた。


こんばんは。
今日は蛍はおりますか?
この前、一匹いるのを見ましたよ。


その人はいった。


今日は、一匹おりました。
さっき、光っていたんです。
休み休み光っているようです。


一回瞬いては休み、二回瞬いては休み。


蛍の人生も、人の人生も、そうなのでしょうか。







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by akikomichi | 2015-06-12 22:41 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月10日 水曜日 曇のち雨。
20時。 

有志で蛍を見つけに行く。
囂しくも愉快な夜道。
霧がたつ。
川沿いの蛍は動きが早い。
野生の早さ。
つっ、つっーと動く。
雄は空高く飛ぶ。
大きな木を超えて行く。
雌は草に顰む。
控えめに光を放ちながらも。


22時。
蛍池。
雨がふりだした。
池では、一匹、じっと蹲るように光るものを見つけた。
あれは蛍だ。
雨粒ではない。


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by akikomichi | 2015-06-10 23:38 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月9日 火曜日 くもり。
10時30分。

蛍の光には波があるらしい。
8時頃に一度大きな波が来る。
それから9時頃と10時頃か。

今日は波に乗れず、暗闇の中、オレンジに光る外灯の光に惑わされた。
木になる光は、近づくと消える。
幻のみ。

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by akikomichi | 2015-06-09 23:44 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月8日 月曜日 雨。
21時。

父から電話があった。
あの海の見える場所を手放したいという。
いつか受け継ぎ、海の見える道の横で、猫と髪結のお袋になり。
言葉を切っては、梳かし、洗い、乾かし整えることも考えたが。
自力でうみだし。
手に入れよ。
ということだろうか。

ところで、今、この蛍池。
蛍が、二度、ぴかぴかと光った。
あの子だろうか。
まばゆいばかりにツーツーと夜にだけ通用する暗号のように光った。
挨拶を光で返すこともできず、言葉に変換した。
またあとでね。
明日も来るよ。
ツーツーなけないので、言葉にするか、歩くか、立ち止まるかして、蛍の光を探すのだ。
手に入れるつもりはない。
蛍の光とそのような言葉を、ただただ探すのだ。


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by akikomichi | 2015-06-08 21:59 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月7日 日曜日 晴れ。
22時。

とりあえず、航空券のチケットを予約しにコンビニに行く。
岐阜にいく予約。
行き帰りだけ保証されたが、みなで眠らず詩を語れたら語り、疲れたら野宿でもしようかな。
詩を堪能しに行くためのチケット。
詩に向き合うためのもの。
いままでのものを確かめること。
通過点ではあるけれども、ひとつの終わりかもしれないこと。

帰りに蛍池による。
ちかちかと蛍が二回、合図のように光った。
そのあとしばらく暗闇が続いた。
田んぼの畦道に頼りなく光る蛍がいた。
いまにも眠りにつくように、ちろちろと光っていた。
みなさん。おやすみなさい。

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by akikomichi | 2015-06-07 23:41 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月4日 木曜日 晴れ。
20時。

有志で蛍の飛び交う川を訪れる。
まだ少ないほうだという。
これから徐々に多くなっていくのだと。

木の上をゆるりと飛ぶのはどれもが雄にみえる。
叢に隠れた蛍はどれも雌にみえる。
番でいると夫婦蛍にみえる。

どれもだれのものでもない。
蛍は蛍でそこにいる。

人も疎らに蛍をみている。
人は人でそこにいる。

帰り道は猫峠。
左手に鹿をみつけた。
最初は座っていたので兎かと思った。
立ち上がると子鹿のようだった。

しばらくいくと。
右手に鹿の親子がいた。
はぐれた子鹿を探していたのか。
はじめてこの道で鹿に出会ったのだった。







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by akikomichi | 2015-06-04 23:36 | 詩小説 | Comments(0)