カテゴリ:詩小説( 217 )

『シャーペン』

シャーペンを盗んだとしよう。
君は悪意を持って、店から盗んだのだ。
では、高い金を払ってシャーペンを買って、その消費税を払うとする。
シャーペンの上に上乗せされたお金は、れっきとした盗まれたお金。
なにもしないで盗まれた公共の福祉とやらに使われるお金。
悪意を持って盗んだら罪で、大仰な理由をつけて当然のようにふんだくるだけで丸儲けのものもいる。

そして、他所の国に別の目的で横ながし続ける。

政治なんて簡単だという。
そうだろう。
それを福祉に使うと言いながら、お金に色はないのだから。
簡単に騙せて、さぞ気持ち良いだろう。
こどもだからわかりません。ではすまない。
悪意の見えないもの。



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by akikomichi | 2015-06-28 00:30 | 詩小説 | Comments(0)

『盲者の行進』

老婆は、信号を探していた。
歌のなる方へ。
杖をつきつつ地面にある凸凹のタイルを頼りに。
行きたい所はあるようで、ない。


ただ、目の前にある道を渡りたい。


そう思ったのだった。
自転車がすぐ後ろを通り抜けていく音と風がする。
今、振り向いたらいけない。
違う音が聞こえるか聞こえないかでなく、永遠に聞こえなくなるかもしれないのだ。
音と杖が頼り。

人はいるようだが、頼りにならない。
一人の人が近づいてきた。


この道を渡るのですか。
私も一緒に渡るので、よかったら、腕をどうぞ。


匂いがきつい。
女だ。
うわずってぎこちない声。
なれていない。
見えないものとの交信。


そうです。
今、信号の音がなりやんで、どっちに行けばいいかわからなかったのです。


信号の音が大きくなりだした。前へすすめの合図。
女は老婆に自分の腕を強引にもたせ、道を渡りだした。

道に印はない。
ただ音だけがする。
人がうごめく気配が今、この道を渡ってもいいという徴。


ここからは、右に行きたいので、それでは、どうも、さようなら。


一瞬、一瞬の見えない行進。








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by akikomichi | 2015-06-25 16:23 | 詩小説 | Comments(0)

前歯がかけたのは、中学生の頃だった。
歯医者に行ったのが運の尽きだった。
治療が終わったら、必ず最後に手鏡を持たせてくれ、どこをどう治療したのか教えてくれていたのに。
その日に限って、鏡をよこさず、いそいで治療を終わらせたのだった。
家に帰って、風呂に入り、歯を磨こうとした時、鏡に写る自分の前歯の隅っこが、鼠に齧られたように。
小さく欠けていたのを見つけたのだった。

おしゃれのためでなく、かけたることのなきように、鏡を持つようになったのは、それからである。

その歯医者は今はもうなくなってしまったという。
その歯医者の忘れ形見が修行して念仏を唱える人になったと風のうわさで聞いた。
別に忘れ形見に恨みはない。
千年たっても恨むとかいう物言いを、念仏したとて、何も変わらず、濁りとどまるだけであるので。
いずれにせよ、すっかり忘れていた前歯について、思い出すように、降って湧いた忘れ形見の話に。
なにかしら縁のようなものを感じずにはおれなかった。

ただしろきしゃれこうべのために、かけたることのなきように、唱えたまえば。

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by akikomichi | 2015-06-20 00:44 | 詩小説 | Comments(0)

『双子見たもの』

双子だとは知らなかった。
はじめ部屋に入ってきた人と、また同じ顔の人が入ってきたものだから。
名札がなかったら、区別も認識もできなかったであろう。

同じ夢を見たことがあるか。
聞いてみた。
流行病の時、同じものを見たと彼らはいった。

天井に恐ろしいものを見たというのだ。
何を見たのかはよく分からなかったという。
ただ同じものを見たとだけ言うのだった。

今、目の前の壁に背を向けてたっているものを。
たしかに同じものだと思えるものを見ている私がいた。

もしかしたら、彼らの見た、恐ろしいものとは。
悪夢のようにそこにいる私だったのかもしれない。



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by akikomichi | 2015-06-20 00:03 | 詩小説 | Comments(0)

『献血』

献血の後、半年近くは血を抜けないらしい。
それまで、元に戻らないということだろうか。

血を400mLばかり抜かれると、喉が異常に乾く。
身体を巡っていた血の気が引いたためだろうか。

血管が浮き出て、そこに流れているものを、ポンプで吸い取り、真空管のような、ガラス管に詰め込まれる。
動く標本のように、そこに赤々と濃いしぼりたての血が満たされていく。

久しぶりに血を見た。それも自分の血を。
少しの痛みをともなった自分から流れでた血。

血液型を判断するために、二種類の水溶液に血を数滴垂らしていた。
血が飛び散るようにぱっと雨だれがガラスに張り付くように水溶液の中で固まった。

それから、時間が経つとひとつのいきもののように血が線条にうねりだし。
やがて死んだようにうごかなくなる。

人の中を廻らない血は、早かれ遅かれ、死にゆくものなのだ。
血は人に寄生するように巡り流れているのだ。

こどもらには、この血が、少なからず混じっているのだ。
臍の緒を通って、母乳をすすって。

君たちの血が濁っているとしたら、母のせいでもある。
血の噴き出るような罪を犯したならば、言い逃れもできない。

悲しいことに、罪を犯したものは。
この血をもって、罪を償い給え。









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by akikomichi | 2015-06-19 23:04 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月17日 水曜日 曇り時々雨。
21時30分。

蛍、今日も翔ばず。
見当たらず、なだけか。
ずっと見ていた方が、今日は見当たらないね。
とおしえてくれた。

しかれども、今年の蛍はよい蛍であった。
色々な場所に翔んでいってしまったようだが。
色々な場所で光り続けてくれた。

そういえば、今日は、蛙もないていなかった。
梅雨だというのに。

帰り道、近所の酒屋さんが光っていた。
一度は店じまいをしたのだが、久しぶりに店を開けたという。

近所の人が角打ちに来るんよね。
やっぱり開けてくれんねっていうんよ。

と おいちゃんは笑った。

酒と、あとは、たばこやね。
今、おいとるのは。

蛍族 ついえたと思ったら またついた。

ということか。

ちょうど梅をいただいたので、ホワイトリカーと瓶をさがしていたのだが、近所にはなく、梅ジュースをとりあえず作ることにし、折角の再開を祝うように、ささやかながら、缶ビールを買って帰った。

梅を氷砂糖と穀物酢で混ぜて、梅ジュースの原液を仕込む。
夏まで待てるだろうか。

久しぶりのビールはうまかった。



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by akikomichi | 2015-06-17 21:42 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月16日 火曜日 雨のち晴れ。
21時30分。

今日は暑くなった。
蛍もでてくるかとおもわれたが、見当たらず。
ゲンジからヘイケの時代へ。
大きなものから小さなものへ。

ゲンジは身体がヘイケより大きく、一匹の雌が卵を生む数も500から1000と多い。
ヘイケは卵を100前後生むという。
黄色い卵が幼虫になるのに、黒く色づく紐のようにみえる。
それが大きくなるにつれて、ゲジゲジみたいな足が幾つもあるのが見えてくる。
脱皮するとき一瞬白くなる。
それから、また黒く色づき、太く大きな紐のようになっていく。
いきものの進化を一年を通して見ているような。

ふと気づくと、左腕に虫がとまっていた。
蛍ではないが、ここにもいきものがいるよというように、じっとつかまっていた。
光らなくとも生きている。




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by akikomichi | 2015-06-16 21:58 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月15日 月曜日 晴れ。
21時30分。

蛍が光るのを待つ人、一人、二人おり。
その後、一人と小さな猫。

蛍の季節も終わりに近づきつつあるのか。
雌が卵を生んでいるのをみたという。
三角形のおしりのある部分からぽとりと産み付けるのだという。
黄色い卵。
千匹、生むものもあれば、5百匹、生むものもあり。
数の桁が違うのだ。


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by akikomichi | 2015-06-15 22:32 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月13日 土曜日 曇りのち雨。
8時。

こどもたちとおやごさんと蛍観察。
何匹かが、互いに光り、響きあっていた。
人につられて、光る蛍。
今日まで生きた蛍の光。

蛍は東日本では四拍子。
西日本では二拍子で光るけいこうがあるらしい。
と、蛍の先生が教えてくれた。
西日本の蛍は、せっかちなのだ。

はじめて蛍を見た方もおられた。
こどもたちはなおさら。

ところで。
今年は、ちびっこ蛍劇団旗揚げ。
ちびっこ蛍がきらきら光る。
いとおしいちびっこ蛍。
ゲンジとヘイケと幼虫さんたち。
また来年もあいに来て。


10時。
せがれと蛍観察。
蛍が三匹、三角形を描くように光る。
たくとをふるう蛍の光、冴えている。






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by akikomichi | 2015-06-13 23:01 | 詩小説 | Comments(0)

『蛍日記』

6月12日 金曜日 晴れ。
21時。

蛍一匹、人一人に出会う。
人は人生を語り。

今年、シルバーになるんやけど。
60歳になる手前まで、スーパーで働いとったと。
昔は店で、ばあちゃん、じいちゃんにいつもこえかけて、名前も知らんけど仲が良かったと。
今は、なんかつめたかよねえ。
今は四人の子どもが巣立って二人だけになったと。
今日は一人で蛍ば見に来たけど、
連れ合いといるより蛍に会いに来たほうがよかとよ、ははは。

蛍の生が終わるように、人の人生の語りも終わり。


瞬きしている間にもう、この歳になったんやね。


蛍がまた、光りだした。

人がまた一人やってきた。


なんばしようとね。
蛍はおるね。


近所の人だった。


一匹おったけど、休み休み光りようみたい。


そうね。
あの水辺で光りようのが見えんとね。
おれは片目が悪いとに、見えるばい。ははは。


わからん。わからん。


そいじゃ、おれはぱとろーるにいってくるけん。

また二人になって、蛍を探していると、人が一人やってきた。


こんばんは。
今日は蛍はおりますか?
この前、一匹いるのを見ましたよ。


その人はいった。


今日は、一匹おりました。
さっき、光っていたんです。
休み休み光っているようです。


一回瞬いては休み、二回瞬いては休み。


蛍の人生も、人の人生も、そうなのでしょうか。







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by akikomichi | 2015-06-12 22:41 | 詩小説 | Comments(0)