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「柚子湯と杉皮と」

長い竹に揺すられて
柚子が暗闇から落ちてきた
一つ二つ三つ四つと
砂利の上を転がった

目の前に転がっていく幸いを拾い集めるような
夢が移ろうような
冬の寒さに耐えていた
かすかな痛みのような苦い匂いを拾い集めるような

我々には寒い冬の中であっても
帰ってから柚子の浮かんだ湯の中にたゆたう
干からびたかさぶたが剥がれるような
すっぱい果汁を絞り出すような幸いがそこにもあった

今日の一つの幸い
湯布院の現場で目串を使い杉皮を並べるのを拝見できた
本物に出会えて
そこにいることの幸い

戦後 
日田で林業が盛んになるにつれ
杉皮を利用する機会が増え杉皮葺も自ずと始まったのではないかと教えてくださった
90歳を軽く超えたおじいちゃんがいらっしゃったが

我々は
一つ一つ杉皮を並べ
一つ一つの剥がされた皮を
もう一度 屋根の上で生きてもらえるように並べていくのだ






by akikomichi | 2017-12-15 00:38 | 詩小説 | Comments(0)