「茅葺への道」

茅葺の屋根に登ってみる景色。

向こうの山に溶け込んで見える人の作った人の生きていける人の住める山のように見える。

やっと、この仕事にたどり着いたんよ。と、会うたびに、せっちゃんは言う。茅葺を愛でているのが、その仕事を拝見するだけで感じられる。彼女の誇りは、その仕事ぶりもさることながら、出来上がりの喜びを知る者だけが味わえるものからきている。揺るぎない満たされる完結。作る喜び。生まれ来る喜び。

かつてはオーストラリアで暮らしていたてっちゃんも黙々と仕事をしているが、大地から作り上げるものを愛でるのと同じように、竹細工職人を目指していたという繊細さを持って、大胆に茅葺をする。野武士のように。

親方は、大大親方つまりはお爺様の代から、大親方のお父さんの手から伝えられた茅葺のあらゆるものを、次の世代に繋げていこうという、志のもと、職人さんたちと人の温もりと茅葺の風通しの心地よさを持ったおおらかな血の通った心ある仕事をされていた。

大親方の相棒である女将さんが来られていた。女将さんは、70歳という年を軽くいなして、茅葺屋根の足場をひょひょいと駆け上り、力もいる棟仕上げをされていた。

私は女将さんのあーちゃんのそばで、棟の出来上がりの手伝いをした。

あーちゃんは、70〜80センチくらいに切った茅を直径20〜30センチくらいの束にしてそれを棟の押さえとしてゆるい角度の屋根の手前と向こうにおいて、その上からしっかりと要所要所の竹組に固定していった。その上を覆うように、杉皮を乗せて、銅線で固定していく。横から見ると、への字に見える。むっくりとした棟の押さえが出来上がる。その押さえを三つほど等間隔で固定していく。かなりの力がいるが、あーちゃんは、熟練の技で、いとも簡単に成し遂げて行った。子供の髪を優しく丁寧に編み上げていくように。

こうして、毛並みの良い生き物のような、美しい茅葺の屋根が出来上がった。

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by akikomichi | 2016-12-22 00:36 | 詩小説 | Comments(0)