「月が近づくごとに」

月が近くなった。

35年くらい前も70年前も同じような月だったらしい。

戦いは終わった。

目の前の月が黒い闇に隠されているように。

向こうにはある月の光が朧に映る。

私の血はとっくに流されていた。

あの月の手前。

戦いは終わっていなかった。

月が遠のくように、血が薄くなる。

一滴の檸檬を丸いガラスのコップに絞りだすように。

ぼんやりと見ていた。

血が流れていくように、うすらぼけた空に落とされた赤い爆弾。

月が近づくごとに流される血の濁りは私の中の戦いの後。

月が近づくごとに剥がされていく私の血の名残。

内から死んでいく私の皮膜。

いらんこと言うな。

戦いがあったのはあそこでのこと。

見えないところで起こされた戦いはニュースにもならん。

黙っておればいいのだ。

内での戦いと空から落とされた爆撃機の爆弾はあそこでのこと。

ここにはないのだ。

楽しんでおればいいのだ。

内でのこと。内でのこと。

あなたには関係のないことなのだ。

歌えばいいのだ。

思い切り愛と調和というものを。








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by akikomichi | 2016-11-14 22:37 | 詩小説 | Comments(0)