「沖縄」

沖縄に住んでいた男がいた。
まだ幼い頃。
父親の仕事は軍属のようなものだったので、基地の中と外を知っていた。
でかい肉。食い切れない肉。
肉には塩とコショウとガーリック。
ハンバーガー、スパム、チョコレート。
ウイスキー、コーラ。
安く手に入った。
ドル箱の報酬と応酬。
ここは日本であって日本でなかった。
英語は近くにあったが、遠くで聞こえた。
父親は、無線が趣味だった。母親も、妹もしていた。
男と弟は、無線をしなかった。
何かと繋がりたいと思わなかったからだ。

沖縄が日本にかえってくる手前で、男は沖縄から日本本土にかえってきた。
まだパスポートがいった。
沖縄が日本にかえってくるまで。
二重国籍どころではない。
選択する自由もない。
申請することもない。
それが当時の戦後の力関係。
今も残る力関係。
殺されずに、やり過ごした僕たちの戦後。
戦争の墓地は基地の中。
戦後日本が溢れだす基地の外。
僕たちは生き残った、それでも。
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by akikomichi | 2016-10-10 22:36 | 詩小説 | Comments(0)