『うちの近くのタックスヘイブン』

 うちの近くの「タックスヘイブン」は、「小便小僧」という焼き菓子屋の裏道にあった。

 「小便小僧」は税金天国の番人のように、そこにあったが、羽の抜け去った天使のように、止めどなく流れる水飛沫のように、焼き菓子のバターの焦げたふうわりとした甘さを辺りに撒き散らしていた。
 

 焦げ付きやすい税金は甘い甘いタックスヘイブンに飛んでゆけ


 とばかりに、最近、流出して大騒ぎになったタックスヘイブンの文書に出ていた住所を頼りに、ここまできたのだったが、かわり映えのしないマンションがあるばかりであった。

 税金逃れにしては、地味である。

 地味であるからこそ、逃れられているのかもしれないが。

 それとは、対照的に、タックスヘイブンに金を預けていたものが所有するビルディングのほど近くには、もうひとつのタックスヘイブンである、騒がしいぱちんこ屋が並んでいた。

 ここ日本では、ぱちんこは税金逃れの天国と言われて、久しいが、未だに野放しになっている、違法賭博場である。

 バカラ賭博とは違って、堂々と違法行為をしているにも関わらず、それは野放しになっている。

 税金泥棒は、遠い島にあるわけではなく、歩いても行ける、すぐ近くにあるのである。


 タックスとんだ 地震でとんだ 魔男かなでるハープでとんだ 天国ではなく地獄になった


 ずっと、公安か刑事か記者のように、人が出てくるのを待っていたが誰も出てくる気配がなかった。

 どこかに高飛びしているのかもしれない。

 もしかして、ここにはもう人は住んでいないのかもしれない。

 蛻の殻のタックスヘイブンには死者さえもいないのだった。

 



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by akikomichi | 2016-04-18 19:09 | 詩小説 | Comments(0)