批判が集まる舛添都知事の都市外交――石原、猪瀬、両前任者との比較で考える

◆保育所より韓国人学校を優先?

 舛添要一都知事が批判にさらされている。

 東京都は3月16日、韓国人学校増設のため、新宿区矢来町にある都有地を韓国政府に貸し出す方針を打ち出した。都によると舛添知事が平成26年7月に韓国ソウル市を訪問した際、朴槿恵大統領から直接の要請を受けたのがきっかけだという。当該土地は6000㎡程度あり、1㎡あたりの地価を60~70万円と想定すると、まともに購入すれば40億円前後となる。

 この土地について新宿区は、都に対して保育所設置のために貸し出しの要請を行ったとのことだが、舛添知事はこれを無視したことになる。

 この問題について、新聞報道やスポーツ紙、文春や新潮などの週刊誌までほぼすべての媒体で批判記事が一通り出そろったが、これらで取り上げられていない観点から「舛添都政」を考察したい。

◆都知事による都市外交の必要性

 ところで、本来の外交とは国家と国家の交渉関係であり、中央政府が行うべきである。しかしながら東京都のような世界規模の都市に限っては、都市外交は必要と筆者は考える。

 グローバル競争社会の中で国境を越えた都市間競争に打ち勝つためには、世界中のヒト、モノ、カネが集まるような魅力的な都市にしなければならない。生活環境が良いか、文化的な街か、治安がよいか、ビジネスがしやすいか、投資しやすいかなど、都市としての総合力が問われることとなる。

 東京は、各種指標でニューヨークやロンドンなど世界の主要都市と肩を並べてはいるが、北京やシンガポールなどアジアの新興都市から激しく追い上げられている。

 例えば、知事のトップセールスで、水道や下水道、交通システムなど東京都が誇る世界最先端のインフラシステムの輸出で外貨を獲得し、一方で海外の先進事例を参考に東京都の都市機能を高めることで企業誘致や海外からの投資につなげるなど、都市外交は都民にとっても有益である。

◆運輸の石原都政、論理力と説得力の猪瀬外交

 ここで舛添都政を、歴代知事の行動と比較してみたいと思う。

 運輸大臣等を歴任した石原慎太郎元知事は、運輸行政に力点を置いていた。それまで国内線中心の羽田空港に国際便を導入することで、新興国に比べて競争力を失っていた首都東京の空港を復活させた。実現できなかったが、米軍横田基地に民間航空機が参入できるようアメリカと交渉も行ってきた。上海やシンガポール、釜山港などに後れを取っていた東京港の国際競争力強化に取り組んでいた。これらは、いずれも都民の利便性や都市機能を向上するための取り組みであり、石原氏の得意分野だった。

 また、作家の猪瀬直樹前知事は、オリンピックを50年ぶりに東京に招致した。トップセールスを行い、持ち前の論理力、説得力で東京都をPRし、積極的な外交を行った。東京オリンピックの経済効果は、日銀によると累計で最大30兆円と試算されており、長期不況で閉塞感の漂う日本社会に風穴を開けた功績は大きい。猪瀬氏には、長く都知事をやっていただきたかったものである。

◆元厚労大臣で国際政治学者のはずが……?

 それでは舛添知事の強みとは何だろうか? 舛添知事は厚生労働大臣経験者で国際政治学者のはずである。本来なら舛添都政は、厚生労働行政に力点を置いてもよいはずだ。また、国際政治学者を名乗るなら、外国との交渉が上手であってもおかしくないはずだ。

 ところが、少子化対策として喫緊の課題である保育所設置ではなく、韓国人学校に貴重な都有地を貸し出すことを独断で決めてしまった。韓国側は大金星だろうが、舛添知事の説明の拙さもあってか、日本側から見れば特段の利益は見出せない。

 厚生労働大臣経験の都知事が厚生労働行政である保育所設置を疎かにし、国際政治学者にもかかわらず外国との交渉が上手に見えないのは、ブラックジョークである。

◆美濃部都政のデジャブ

 私は舛添知事のこの度の行動に限って言えば、昭和42(1967)年から54年まで三期都知事を務めた美濃部亮吉氏に似ていると思う。

 美濃部氏は、北朝鮮政府や朝鮮総連の要請を受けて、当時の文部省の反対を押し切り、朝鮮学校を各種学校として認可した。また、悪名高い「帰国事業」の手助けをして、多くの朝鮮人や日本人配偶者を北朝鮮に送り、死に追いやった。共産主義独裁政権をこのように支援することで、美濃部氏は平壌に招かれ、金日成から直接謝辞を受けたのである。

 ちなみに朝鮮学校とは、我々日本人が想像するようなまともな教育機関ではなく、朝鮮総連の下部組織である。元校長が日本人拉致の実行犯で国際手配を受け、別の元校長は覚せい剤密輸で逮捕されるなど、現在も警察や公安調査庁などの監視対象団体に指定されている。

 朴槿恵大統領から要請され、韓国人学校に便宜を図る舛添氏と、金日成の望みどおり朝鮮学校に便宜を図った美濃部氏の共通点は、日本国内で大きな反対があったにもかかわらず、都民福祉よりも外国首脳からの要請を優先してしまう点である。

 美濃部氏の場合は、筋金入りの共産主義者だったからまだ理解できる。舛添知事の背景はまだよくわからない。これから注視する必要があるだろう。

 最後に読者の誤解を招かぬよう一つだけ申し上げたいのは、筆者は韓国バッシングをしたいのではない。筆者は昨年12月の日韓合意を否定的に見てはいない。

 なぜならば、日本やアジア諸国、アメリカなど自由主義諸国の外交・防衛の核心は、共産主義中国の侵略行為と北朝鮮の暴発をいかに食い止めるかであり、そのためにも韓国を味方に付けておくことは必要だからだ。

 竹島の不法占拠や従軍慰安婦の捏造など、我々日本人には認めがたい問題を抱えているが、中国や北朝鮮に軍事的に脅かされている私たちにとって一定の日韓連携は必要と考える。

【野田数(のだかずさ)】
教育評論家。東京都出身。早稲田大学教育学部卒業後、東京書籍に入社するが、歴史教科書のあり方に疑問を持ち、政治の道へ。東京都議会議員時代に石原慎太郎氏、猪瀬直樹氏と連携し、朝鮮学校補助金削減、反日的な都立高校歴史必修教材の是正を実現し、尖閣購入問題などで活躍。その後、多様な経験を活かし、ビジネス誌や論壇誌で本質を突いた社会批評を展開している。

<写真/Jeff Boyd>



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by akikomichi | 2016-04-05 11:23 | 日記 | Comments(0)