『梟』


博多の街をせがれと歩いていた時の事だった。

金髪の小さな女の子が、辺りをおずおずと覗きこむようにしてゆっくりと、母親らしき人と手をつないで、こちら側に歩いてきていた。

何かあるのだろうかと。

彼女に釘付けになっていた。

すれ違いざま、なにか言いたげに微かに笑ったような気がしたので、気になって、なんとはなしに、女の子と手をつないでいる母親の右肩の方に目をやった。

母親の肩には、白い梟が、白いふさふさの羽の生えた茸のようにびくともせず、じっと乗っかっていた。

梟は夜行性なのだろうが、まだ日も残った夕暮れ時であったので、ちょっと、眠そうな起きたばかりの子どものように、きょとんとした風に、肩に乗っかっていたのであった。

過ぎ去っていく姿を、そのまま呆然と見続けていると、梟が気づいたのか、こちらを180度首を捻らせ、じっと見つめてきた。

あの梟の目に囚われた気がした。

しかし、次の瞬間、私の視界には、母親の左肘が入ってきていた。

もう一羽の梟が、やはり、貴重な白い茸のように、ちょこんと乗っかっていたのであった。


女の子は、三羽目の梟のように、街ですれ違った人々の、反応を狙い撃ちして、目で捕獲して歩いていたのだった。



私の母は、梟は不苦労と掛けて、縁起がいいからと言って集めていた。

といっても、あの女の子の母親の肩に乗っていた猛禽類の鋭い爪と嘴と趾をもって狙い討つ生物ではなく、静物の方。

焼き物だったり、和柄の布だったり、皮だったり、キルトだったり、木でできた代物の方であるが。

生物は流石に、母の収集癖の手に負えない代物と言えた。

しかも、二羽ともなれば、相当な餌もいるであろうし、広い森もない。

我が実家の小さな庭には、甘夏の木と雑草が生えてくる野生に近い庭であったとしても、獲物は夏には蝉、秋には蜻蛉くらいしかいないので、生きづらいことであろう。


そういえば、女の子も、大人しくも賢そうな梟のような大きな瞳をして白い服を着ていたし、更にまた、母親も同じく白っぽい服を着ていたので、どことなく梟の化身のようでもあった。


昨日、偶然にも、日本の国会議事堂と米国のホワイトハウスを空から見ると何に見えるか。

という謎を聞いたばかりであったので、何か、縁のような、共時性ともいえそうな、重なりが数珠つなぎになっては、それを繋げる糸のようなものを、手繰り寄せていた。

その謎とは、真上から、見下ろす航空写真を見ればわかるのであるが。

ある程度の高さにドローンを飛ばせば、見えるかもしれないが、最近、両国とも、そういった施設近くでのドローン飛行は禁止になったばかりであったので、神の視点か、悪魔のたわむれか、飛行機にのるか、鳥になって飛ばない限り、見ることはできないが。

言わずもがな、梟そっくりなのであった。


まだ日の残る夕暮れの小さな川辺の木々のほうへ向かう女の子とその母親の上には、空いっぱいに滲んだ鱗雲が広がっていた。




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by akikomichi | 2016-03-25 22:42 | 詩小説 | Comments(0)