住宅ジャーナリスト・山下和之の目 マンション等の住宅購入で数百万円の消費税は、おかしくないか?欧米では非課税や軽減税率

軽減税率議論が進んでいるが


 政府・与党は2017年4月からの消費税10%への引き上げに合わせて、軽減税率の実施に向けての議論を活発化させています。生鮮食品限定、いや加工食品も含むべきだとさまざまな議論がありますが、そこには、住宅の「じ」の字も出てきません。

 というのも、実は住宅生産団体連合会などの住宅関連団体では、早くから住宅への軽減税率の適用を求めた運動を展開してきました。今回の10%への引き上げ時にも、税金問題に影響力のある国会議員などへのロビー活動を熱心に実施してきたのです。

 にもかかわらず、軽減税率適用の対象としてまったくといっていいほど議論されることがないのが現実。関係者としては、10%実施時には実現は難しいと判断、次の引き上げ時までにはという方向に舵を切らざるを得ない状況に至っています。

4000万円のマンションで150万円安くなる?


 なぜ非課税や軽減税率を求めているのか、理由は簡単です。住宅の場合、土地は非課税ですが、建物は課税の対象になります。ですから、3000万円の注文住宅を建てようとすれば、税率8%なら240万円の消費税がかかります。これが10%になると300万円ですから、60万円の増税。さらに、12%に上がれば360万円、15%なら450万円とどんどん重くなってしまいます。それでは、住宅が売れなくなってしまうという危機感があるわけです。

 マンションも建物部分に消費税がかかります。4000万円のマンションで土地が2000万円、建物が2000万円なら、建物2000万円の内訳は消費税8%時であれば本体が1852万円で、消費税が148万円です。住宅は内税表示なので実感がないかもしれませんが、実際には150万円近い税金を負担しているわけです。この消費税が非課税になれば、4000万円のマンションが3852万円で手に入る計算。住宅業界関係者だけではなく、住宅取得を考えている人にとっても、この消費税の有無はたいへん影響の大きな問題です。

主要先進国では非課税や軽減税率が常識


 本来なら、皆さんもっと声を大にして消費増税反対、非課税や軽減税率適用を求めてもいいはずですが、内税方式の表示で、150万円近くの税負担になっているという実感を持ちにくいことが、非課税や軽減税率適用機運がなかなか盛り上がらない要因になっているのかもしれません。

 しかし、実はこの非課税や軽減税率制度は、欧米先進国ではごく当たり前の制度です。図表1をご覧ください。

図表1 欧米先進国の住宅消費税の現況(「住宅生産団体連合会ホームページ」より)

 たとえば、アメリカでは州によって課税方法が異なりますが、ニューヨーク州では非課税で、ドイツもやはり非課税。イギリスも税率0%で実質的な負担はありません。フランスやイタリアでも軽減税率が実施されています。

住宅消費税がかかる日本は先進国ではない?


 住宅は一般の消費財と異なり、社会資本とも考えられ、一般の商品と同様に消費税を課すべきではないということと、国民が住宅を手に入れるために努力することが国の成長につながる、消費税でそれを阻害するべきではないという考え方なのでしょう。それが欧米先進国のスタンダードであり、そうなっていない日本は、こと住宅という面に限ればいまだ先進国とはいえないのかもしれません。

 かつての「ウサギ小屋」と揶揄された時代から努力を重ね、住宅の技術革新などによって耐震性、省エネ性、バリアフリー性など世界トップクラスの基本性能を確保するに至りました。外観デザインや設備面でもどこに出しても恥ずかしくない水準であるのはいうまでもないだけに、この消費税をめぐる現状はたいへん残念なことです。

消費増税は新設住宅着工を大幅に減らす


 周知のように、消費税が増税されるたびに新設住宅着工戸数は大きく落ち込んできました。図表2にあるように、1997年4月に消費税が5%に引き上げられたとき、前年の96年度には駆け込み需要が発生したものの、その反動から97年度、98年度と大きく落ち込み、その後は消費税3%時代の着工戸数に回復することはありませんでした。

 14年4月からの8%への引き上げ時にも、13年度には駆け込み需要が発生、14年度は大幅な落ち込みになりました。そして、残念ながら15年度もそれ以前の水準に戻る兆しはみられません。人口や世帯数の減少、持家率の上昇、住宅性能の向上による長寿命化などさまざまな要因がありますから、単に消費税だけの問題ではないでしょうが、それでも消費増税の影響は小さくあります。

図表2 新設住宅着工戸数と前年比の推移(国土交通省『建築着工統計調査』より)

住宅建設が減少すれば経済にも大きな影響


 新設住宅の着工戸数が減少すれば、日本経済にも大きな影響を与えます。住宅着工は内需の柱のひとつですから、その減少が景気の足を引っ張ることになるのです。

図表3 住宅建設20万戸減少の影響(「住宅生産団体連合会ホームページ」より)

 住宅生産団体連合会の試算によると、図表のように、年間20万戸の減少は全産業誘発総額で10兆円、就業誘発効果では80万人、自治体などの税収効果は1兆円以上のマイナスになるそうです。逆にいえば、消費税増税時に非課税にしたり、軽減税率が適用されれば、それだけ大きな経済効果が期待できるということです。

 住宅消費税の非課税、軽減税率の適用は、消費者にとっては住宅価格の実質的な引き下げになるという大きなメリットがあります。しかも、より広い目でみれば経済活性化の起爆剤にもなる可能性が高いわけです。それだけにより多くの人に、この住宅消費税に関する問題に関心を持っていただき、軽減税率や非課税化の声を上げていただきたいものです。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト

●山下和之(やました・かずゆき)
住宅ジャーナリスト。各種新聞・雑誌、ポータルサイトなどの取材・原稿制作のほか、単行本執筆、各種セミナー講師、メディア出演など多方面に活動。「山下和之のよい家選び」も好評。主な著書に『よくわかる不動産業界』(日本実業出版社)、『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(学研パブリッシング)など。


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by akikomichi | 2015-12-16 08:21 | 日記 | Comments(0)