『魚釣り』

僕達は魚釣りに出かけた。
近くの鯰池。
かあさんが介護の仕事で自転車に乗ってとおっていたといってたところ。
ビギナーズセットを肩にからってでかけた。
餌はそこいらにいるだろう虫。
あらかじめみつくろってある成り行きを辿るために。
僕達は、ビックブラザーズとは遠いところにいるけれど、いつも監視されているのだ。
自転車が邪魔だというふうに蹴り上げてくる近所のえげつないビックママに。
警察の人は鯰池に駐めてもいいよといったけどビックママには通用しない。
邪魔なものは邪魔なのだ。
ともだちと釣り糸を垂らして、風が寒くなっていくのを糸と竿の揺れで逃がすように、じっとしていられない僕は、偽餌で魚を誘い、池の名にまでなっている鯰が釣れるのを待っていた。

おい、なんか、ひっかかった。

ともだちにいった。

引き上げたのは、へどろにまみれた自転車の籠だった。

なあんだ、中身が無い。ただの籠だ。

びぎなーずらっくじゃねえのかよ。

ともだちはいった。

おれにもひきがきた。

ともだちがあげてみると、黒バスだった。

慣れた手つきで巻き上げながら、さっき引きあげたばかりの籠に収まるくらいの黒バスを針から離し、池に放した。

きゃっちあんどりりーすかよ。

僕はそういいながら、空っぽの籠を持ったまま、何かがくるのを待っていた。

かあさんはきっと来ない。

鯰池に沈んだままだ。


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by akikomichi | 2015-11-29 00:21 | 詩小説 | Comments(0)