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自由の女神

自由の女神が見たいというので、我々は、自由の女神を目指して、フリーのフェリーに乗り込んだ。

一時間に一度、自由の女神を遠くから眺める為に、多くのものがゲートに集まっていた。

まるで、子宮内の卵子を目指す精子のように、わらわらと船に入っていくのだ。

もちろん、目指したいのは女神の胎内なのだが、あまりに遠く、眺めるだけの、ちょっとした女神ストーカー気分を味わった。

手出しはしない。

安全な我々。

女神は、微笑んでいるようで憂いを帯びているようにも見えたのは、すこしの年季と塩害からか、色あせたガラスに阻まれているのもあるが、遠くにいることの、想像の範囲を出るものではなかった。

ずっと、手を上げて、インドの修行者のように、何をか待っているようでもあった。

確かに、その手をあげる自由はあっても、下げる自由はないのだった。

潮の流れは摩天楼から遠ざかり、我々を乗せて、向こう岸まで運んでくれた。


自由の女神、爆破予告があったと知ったのは、帰ってからしばらくしてのことだった。

我々ではない、どこかの真のストーカーのしでかしたことだ。


by akikomichi | 2015-08-29 17:35 | 詩小説 | Comments(0)