『蛍日記』

6月12日 金曜日 晴れ。
21時。

蛍一匹、人一人に出会う。
人は人生を語り。

今年、シルバーになるんやけど。
60歳になる手前まで、スーパーで働いとったと。
昔は店で、ばあちゃん、じいちゃんにいつもこえかけて、名前も知らんけど仲が良かったと。
今は、なんかつめたかよねえ。
今は四人の子どもが巣立って二人だけになったと。
今日は一人で蛍ば見に来たけど、
連れ合いといるより蛍に会いに来たほうがよかとよ、ははは。

蛍の生が終わるように、人の人生の語りも終わり。


瞬きしている間にもう、この歳になったんやね。


蛍がまた、光りだした。

人がまた一人やってきた。


なんばしようとね。
蛍はおるね。


近所の人だった。


一匹おったけど、休み休み光りようみたい。


そうね。
あの水辺で光りようのが見えんとね。
おれは片目が悪いとに、見えるばい。ははは。


わからん。わからん。


そいじゃ、おれはぱとろーるにいってくるけん。

また二人になって、蛍を探していると、人が一人やってきた。


こんばんは。
今日は蛍はおりますか?
この前、一匹いるのを見ましたよ。


その人はいった。


今日は、一匹おりました。
さっき、光っていたんです。
休み休み光っているようです。


一回瞬いては休み、二回瞬いては休み。


蛍の人生も、人の人生も、そうなのでしょうか。







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by akikomichi | 2015-06-12 22:41 | 詩小説 | Comments(0)