『イスラーム世界』 片倉もとこ 梅村坦 清水芳見編  岩波書店

 中央大学の大学院総合政策研究科で開催したフォーラム「イスラーム社会と日本〜研究の最先端から〜」における連続講演をまとめ直したもの。

 日本社会とイスラームをめぐって 故片倉もとこ氏のイスラームへの認識として。

〜〜〜〜〜以下抜粋〜〜〜〜〜

日本にイスラームに関する情報が決定的に不足していることは、丸山真男氏のような大先達でさえ、うっかり見落としているという事実がある。『日本の思想』の書の中で、「日本の思想の中には世界中の思想が含まれている」と断じられているとき、イスラームの思想が日本の中にははいっていないということが看過されてしまっている。

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マスコミ等で報道されるイスラームに関する情報が、めったにおこらないような非日常的なものにかたよっているということである。

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女性の教育は禁止され、ヴェール、一夫多妻婚といったイスラーム世界の一部に見られる風習によって、女性の地位は低いというイメージで語られてきた。しかし、イスラーム勃興当時から教育は女性にも男性にも重要であるとされ、基本的には男女は平等であるとする思想が明確である。

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イスラームの根幹思想として。

タウヒードとホリスティック・アプローチをあげている。
タウヒードとは、一化の思想であり、monism(一元論)と似ているが、イスラームでいう一化の思想は多様性を前提にしたmonismである。

例えば、人間の体の中には、心臓もあれば肝臓もあるし、腸もあれば胃もある。多様なものが存在するが、人間の体は全体として、ひとつにまとまって機能している。
すべての存在価値は平等であり、同等であるということがイスラームの根本思想なのである。
しかもひとつにまとまっているというタウヒードの思想は、ホリスティックなアプローチをするものだといえる。
人間の体は、互いに連関している。多様であるがひとつの全体であると考える、ホリスティック・アプローチがイスラームでは早くからなされていた。


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イスラームの特徴として都市性がある。

〜イスラームはながらく、「砂漠の宗教」と言われてきたが、都市文明の発達した西アジアの都市のなかからイスラームは発祥し、多様な人々の出入りする都市での生き方の指針を与えるものが、イスラームであり、「都市の宗教」と言われる所以である。

ビン・ラーディンの祖先であるハドラミー(ハドラマウト出身者)たちが当時、西アジアの大商業都市であったマッカに集結し、また散らばっていったように、世界最古の都市文明の発祥地で生まれたイスラームは、その生誕から生い立ちにおいて、都市的なるものであった。


互いの世界を安定させる共生の思想をイスラームは内包している。それを平和の世界と戦争世界に分けて考え、共生がうまくいっている世界のことを「平和の世界(ダール・アルイスラーム)」、うまくいっていない世界のことを「戦争世界(ダール・アルハルブ)という。


ジハードは「聖戦」と訳される事が多いが、元来は、アラビア語の「努力する」という意味の「ジャハダ」が語源であり、共生がうまくいっていない世界を少しずつ、平和の世界に近づけていこうとする努力の過程そのものである。

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by akikomichi | 2014-08-10 00:24 | 日記 | Comments(0)