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『女たちの血塗られた胎児の声をきけ』 其ノ二

か細い道を通り抜け二日市保養所跡の桜の木の下にいた
戦争後 大陸から引き揚げて来た女たちの
産み落とされることなく死んでいった胎児が埋められているという
一つの部落を逃げのびて 一人の女をかんつうし
支那人 鮮人 ロシア人 軍人 村人かんつうし
顔に泥塗り 髪切った 女をつかまえかんつうし
無法地帯を通り抜け 不法妊娠させられた
女の声は聞けずとも 胎児の声に耳すまし
桜の木の下立ち止まり 
水子地蔵はうつ向いて 手に抱く赤子を見るばかり 
大きな石碑に刻まれた仁という字は優しさの意味を持つとも言われるが
梅毒 コレラを消すとされ 売りだされてた仁丹の仁という字を思い出す
かんでもかんでもなくならず
銀歯のように貼りついた苦味のような重しかな
桜の木の下 花もなく 葉もなく 果てた苦味かな
by akikomichi | 2012-10-01 11:03 | | Comments(0)