形から入る

形から入るように
心構えを持つように
と今日が最後のお勤めだった
心構えの師匠のシゲさんに言われて
ニッカポッカを手に入れた

オランダの子供服が起源というものもあるようで
ニッカポカーズといえば
オランダ移民のことだという
スポーツや軍服で使われていたという
もともと江戸時代やらの鳶職の方々のそれに近い形だというものもある

ニッカポッカをはいていると
いつも面白いお父さんのような大工さんが
板についてきたねえ
俺が若い頃はいとったのばやるばい
と言って大きな紺のニッカポッカをくださった
ありがたいことである 宝物にしたい


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# by akikomichi | 2017-09-21 20:23 | 詩小説 | Comments(0)

怪獣の腕のなか



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# by akikomichi | 2017-09-18 22:28 | 日記 | Comments(0)

ご安全に世界夫人よ




「さようなら世界夫人よ」

ヘルマン・ヘッセ 植村敏夫訳 作曲・編曲 Pantax's World

世界は がらくたの中に横たわり
かつてはとても愛していたのに
今 僕等にとって死神はもはや
それほど恐ろしくはないさ

さようなら世界夫人よ さあまた
若くつやつやと身を飾れ
僕等は君の泣き声と君の笑い声には
もう飽きた

世界は僕らに愛と涙を
絶えまなく与え続けてくれた
でも僕等は君の魔法には
もう夢など持っちゃいない

さようなら世界夫人よ さあまた
若くつやつやと身を飾れ
僕等は君の泣き声と君の笑い声には
もう飽きた

http://www.youtube.com/watch?v=Ao6Yyz6nEYo


〜〜〜〜〜〜〜

ヘッセへの続投詩

「ご安全に世界夫人よ」

世界は台風とミサイルの最中

死神は横たわり

葬儀の画像を探している


車輪の下を念入りに踏みつける暗黒世界夫人よ

車輪の上を手放しで転がしていく新世界夫人よ

車輪がパンクして走れない月世界夫人よ

我々はあなた方の街宣と冷笑には

もう飽きた


世界の目はカッシーニの燃え尽きる前の画像を見て

宇宙にはてた

かつてはとても愛していたのに

くらい宇宙の中で燃え果てたとしても

元に戻るだけのことであるにしても


ご安全に

世界夫人よ

さあまた

宇宙のクズから這い上がり

ご安全に

世界夫人よ

さあまた

夢々 思いもよらない死をまねくなかれ




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# by akikomichi | 2017-09-18 21:49 | 詩小説 | Comments(0)

どの手が作るか

どの手が作るかで
茅葺が変わるとするならば
ただ見ているだけのものに
あっちに行けというものの手よりも
茅にのっかった小さなカエルを見つけて笑うものの手で
生きているものそのままのものをそのまま愛でるものの手で
作り続けていただきたい
いたずらに煽られきょうそうで追い立てられて作るよりも
丁寧にいきて作っていけるように
作り続けていきたい


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# by akikomichi | 2017-09-18 20:20 | 詩小説 | Comments(0)

以下抜粋

私はプーラン・シングの鍛冶場が好きだった。キクユ族の人たちは、二つの点でこの鍛冶場が気に入っていた。

まずひとつには、鉄という素材のなかでも最も魅力に富んだもののせいである。
鉄は人々の想像力を彼方まで導いてゆくものだ。

〜〜〜〜〜

第二に、土地の人々の自然に近い生き方を鍛冶場に惹きつけるのは、その音楽である。
鍛冶のかんだかく快活な、しかも単調で目覚ましいリズムは、神話のような力を持っている。
雄々しさに満ちたその音は、女たちの平衡を失わせ、心をとろけさせる。
その音は率直で気取りがなく真実を、ただ真実のみを語る。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

彼の鍛冶場のつち音は、聞く人の心にそのまま声を与えるかのように、それぞれの人が聞きたいと望む歌になる。
私にとっては、つち音は古代ギリシャの詩の一つを歌っていると聞こえるのだった。その詩を友達が訳してくれた。

「エロスの神は鍛冶さながらにつちを振りおろし
あらがう我が心を火花を散らせて打ち打つ
エロスは我が心を涙と嘆きもて冷やす
赤熱の鉄を流れにひたすごとく」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

オウム

デンマーク人の年老いた船主が、自分が若い頃の思い出にふけっていた。
16歳の時、シンガポールの売春宿で一夜を過ごしたことがあった。
父親の持船の船員たちと一緒に登楼し、そこで中国人の老女と話をしたのだった。
少年が遠い国から来たのだと聞くと、老女は自分の飼っている年取ったオウムを連れてきた。
昔々、私が若かったころ、やんごとない御生れのイギリス人の恋人がいて、このオウムをくれたのだよ、と、老女いった。
それなら、この鳥はもう百歳くらいだ、と少年は思った。
老女の昔の恋人は、このオウムを彼女に送り届ける前に、何かの文句を教え込んでいた。
その言葉だけは、どこの言葉なのか、どうしてもわからず、客たちの誰に尋ねてみても、意味のわかる人は一人もいなかった。
そこで、もう長年の間、女はたずねるのをあきらめてしまっていた。
だが、そんなに遠くから来たのなら、もしかして、これはお前さんのお国の言葉ではないかえ。
そうだったら、この文句の意味を説明してもらえまいかと思って。
そう言われて、少年は不思議な感動に心をゆすぶられた。
オウムを眺め、そのおそろしいくちばしからデンマーク語が洩れるところを想像すると、もう少しでその家から逃げ出しそうになった。
だが、その中国人の老女に親切をしてやりたいという気持ちが、かろうじて少年の足をふみとどまらせた。
ところが、老女がオウムに例の言葉を言わせるのを聞いてみると、それは古代ギリシャ語だった。
オウムはその言葉をとてもゆっくり唱えだし、少年にはそれがわかるくらいのギリシャ語のわきまえがあった。
それはサッフォーの詩だった。

「月は沈み スバルの星々は沈み
真夜中はすでに去り
かくて時はすぎ 時はすぎ
横たわる我は一人」

少年が詩句を訳すと、老女は舌を鳴らし、くぼんだ小さな眼を見張った。
もう一度繰り返してくれないかとたのみ、それを聞くと、ゆっくりと頷いた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

キクユ族はもともと死者を埋葬せず、地上に置いたままにしてハイエナやハゲタカが食べるにまかせる。
私はこの習慣を好ましく思っていた。
太陽と星々の光にさらされて横たわり、短時間のうちにきれいさっぱりとたべられて消滅し、そして自然と一体になり、風景の一部と化すのは、楽しいことではないか。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「嘆きの歌を変えよ
よろこびの調べに
われはあわれまんとてきたらず
楽しみを求めて来るならば」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「死にあたり
火はわがむくろを犯せども
われ心にとめず
今はすべてのもの、
われにとりてよければ」


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# by akikomichi | 2017-09-17 14:12 | 小説 | Comments(0)

さしよし

雨風と太陽に削られていく時の再生をおこなうように
さしよしをする
だんだんにまだらになる
ふるいよしあしとあたらしいよしあし
さじかげんで平たくも固まりにもなる
まるで
我々のように
そこにおさまっていく時の束たち
どうか一つ一つが連なって
一つのものになるように
と祈るように
丁寧に生きるように
さしよしをする


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# by akikomichi | 2017-09-15 22:48 | 詩小説 | Comments(0)

忘れることがないように



死神と出会って
魅入られてしまった方は
天上に行って幸せに暮らしていると
美山の中野親方はおっしゃった

それでも
なくなってしまった方を
忘れることができないものたちは
自分のやれることをやって生きて行くしかできない

残されたものたちは心を亡くすことなく
自分たちのできうることをすることでしか
受け継いでいくことでしか
報いることはできない

なくなった方の意思を受け継ぎ守っていけるように
心ある方々に出会えることで守っていけるように
そこだけは
忘れることがないように









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# by akikomichi | 2017-09-11 01:22 | 詩小説 | Comments(0)

シゲさん

シゲさんが神奈川から助っ人にやってこられた。
とても大きな方である。
身長はもちろん、人間としても。
とても繊細で優しくもあるが、仕事に関しては厳しいだんどりの鬼と化す職人さんでもある。
茅の扱い方やみちぎに登る時の脚の踏ん張り方を教えていただく。
私が雨の中、フラフラして滑り落ちそうであったらしく、見るに見かねて教えてくださったのだった。
ありがたいことである。
いろいろ、学ばせていただけることに感謝である。

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# by akikomichi | 2017-09-06 23:09 | 詩小説 | Comments(0)

宗像フェス


生まれ育った宗像でフェスがあるのは嬉しいことです。
可愛い姪っ子ちゃん、ライブも頑張ってくださいね。応援してます。


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# by akikomichi | 2017-09-06 22:56 | 日記 | Comments(0)

からすとこじ開けと

からす で よし を引き出し
新しいよしを親方に手渡す
少しずつでも
先を見て進んでいけたらと思う
こじ開けを使い
二番鉾にしろ縄をかけ
みちぎに男結びで結わえることも
先輩にさせてもらえるようになった
少しずつでも先を見て進んでいけたらと思う
うちに回って鉄針を取る
アバカを竹に回すために
やらせてもらえないことよりも
やらせてもらえる喜びの大きいこと
教えていただいた方々に対する感謝となり
自分のできることを広げていけることへの感謝となり

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# by akikomichi | 2017-08-31 20:03 | 詩小説 | Comments(0)

「風の波紋」

「風の波紋」というドキュメンタリーにも出てくる茅葺の屋根改修にも関わっておられる写真家の高松さんが、さしよし補修をしている現場に偶然、足を運ばれて訪ねてくださった。

自然に生きるということを実践されている方々で、自分の理想でもある。

狭い世界に閉じこもり、いがみ合うようなことがしたくないのなら、いろいろな世界を見て、存分に、味わっていきたい。

いつか尋ねてみたい。

世界が少し広がった気がする。

ありがたいことである。

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# by akikomichi | 2017-08-30 20:27 | 詩小説 | Comments(0)

以下抜粋。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ワシの影は平原を横切り
かなた、名もない空色の山々に向かう
ひとむれの若いしまうまの影は
ほそいひづめのあいだにしずまり
永い一日を動かずにいる
この影達は夕暮れを待つ
夕日が煉瓦色に染め上げる平原に
青く長く自らの形を延ばし
水場をさして歩いて行く時を待つ




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「さあ一緒に出かけて、生命を不必要な危険にさらしていただけないかしら。もしも生命になにかの価値があるとしたら、生命は無価値だということこそ、その価値なのね。自由に生きる人間は死ぬことができるという言葉があるでしょう。」
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# by akikomichi | 2017-08-28 23:32 | 小説 | Comments(0)

茅葺と陶芸と

星野村周辺を散策し、茅葺屋根やかつて先輩方が作られた屋根を見てきた。

星野村にある原爆の火も拝見した。
火は高いところにあり、遠くからしかそこに火があると気付かないくらいほのかな火であった。

茅葺の先輩の森けんさんが屋根を葺いたという山本源太さんの窯にも寄らせていただいた。

美味しいお茶と奥様のお手製の抹茶寒天の風味を源太さんの器が包んでいた。
その全ての、手触り肌触りをも美味しくいただく。

僕の星という鉄の星のようなイガイガが突出しているものを見て、サザエあるいは昔の鉄の玉にチェーンをつけて振り回す海賊の姿を思い浮かべたりしていた。
聞くところによると、源太さんは自分の名前をつけた星があるという。
そのイメージがここにあるのだ。
源太さんの詩集を森けんさんからいただき、じっくり読んでいる。
土と会話して、星野村にあるいろいろな風景と目と手と言葉と体全体で生まれだしていくものがそこにあり、私も源太さんと同じ道を歩いていることに気づく。
とても近しい詩や言葉の紡ぎ方。

今、私は手の力をとても信じている。
心から信頼している。


それから、お猪口と茶碗を、心から信頼し尊敬する先輩である上村さんと、心優しい森けんさんと作らせていただいた。
犬のロクちゃんがワシャワシャと肉球で背中を押してくれたり、匂いをクンクン嗅いでいた。
この匂いを含めての出会いを覚えてくれたに違いない。
土は滑らかで心地よく、人肌のきめを細かくしてくれる柔らかさであった。
そこにたまる土と水の混ざったものの中におたまじゃくしやヤゴが住んでいたくらい、すみごごちの良い土なのであった。
上村さんや森けんさんの手は大きく、手仕事をされている方のおおらかな大きな手は言ってみれば無骨なのであろうが、そこに力強さと全てを包み込むおおらかさと優しさのようなものを作り上げていくものを感じた。
この世界があって本当によかった。

茅葺も陶芸も人の手を通して作り上げられていく、柔らかいものなのだ。







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# by akikomichi | 2017-08-23 05:16 | 詩小説 | Comments(0)

「日本の草屋根」相模書房 小林梅次著 より

万葉集一六三八の歌

あをにいよし奈良の山なる黒木用ち造れる室は坐れど飽かぬかも

これは聖武天皇の歌であるが、黒木の語が見える。黒木の意味は、皮付きの木という意味と常緑樹の意とある。それはともかくとして、室の語が使われているけれども、穴の段階から脱した建築を思わせるものがある。ただ、黒木が建物のどの部分に使われていたものか、この限りではわからない。


万葉集千六三七の歌

はだ薄尾花逆葺き黒木用ひ造れる室は万代までに

この歌は「尾花逆葺き」の語によって、その様子は一段と明らかで、屋根が尾花、つまり茅で葺かれていたことを示している。



播磨国風土記中川の里の項に

時に大中子、苫もて屋(いへ)を作りしかば

とあるのも、苫で屋根または壁を作ったのであろう。


徒然草にも

家の造りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなるところにもすまる。熱き頃、わろき住居はたえがたき事なり。

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# by akikomichi | 2017-08-16 22:36 | 日記 | Comments(0)

「黄色い日々」梅崎春生

(あいつは助かったんだな、あいつは)
それは麻痺性痴呆の病名をもって、A級戦犯の法廷から除外された男であった。この男がM病院に収容されていることは知っていたし、直線道路の彼方にその姿を見たとき、彼はすぐその男であることを直覚した。長身のその姿は、冷たい風のようなものを漂わせながら、近づいてきた。すれちがうまで彼ら三人は、しんと口をつぐんで歩いていた。
(どうしてあのときおれたちはしんとしてしまったのだろうな)

梅崎春生「黄色い日々」より抜粋


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

なんとなく、梅崎春生「黄色い日々」を読んでいた。

「幻化」「桜島」なども読みつつ、戦争の後始末としての東京裁判についてふと思った。


誰が、生き残ったものを責めることができようか。などとおもいながら、これを繰り返し読み返していたのだ。

おそらく、梅崎の残した小説から鑑みると、上記の男は、大川周明のことであろうと思われるが。

東京裁判を生身で知っているものは、半ばあきらめのような、どうしようもない押し付けられた裁判を、生で、引き受けてきたのであるから、それを卑怯という単純な暴言を吐き捨てるだけでは、あまりにもそこが浅いようにも思われる。

たとえそれが、現人神、言ってみれば超A級戦犯的存在であったとしても、罪や罰というものを、他から受けつつ、生き残ったもの自らの中に課している様々な償いのようなものを見ようともしないのは、あまりにもそこが浅いと言わざるをえない。

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# by akikomichi | 2017-08-14 00:01 | 小説 | Comments(0)

四十九日

四十九日が近くなり、盆でもあり、亡くなった先輩のお宅に皆さんと伺う。

奥様と子供さんはいつも通りの日々を過ごしておられるようであったが、大きな存在をなくしたことは、ご家族にとっても、私たちにとっても、未だに受け止めきれないもののように思われた。

写真の先輩は微笑んでおられるが、どこか上の方、遠くの方を見ているようで、もう、お話しすることも、教えていただくこともできない哀しみのようなものを置いて行かれたことを思った。

まだ、そこにおられるような、そのような気になることも、しばしばであった。

身が引き締まるような、何事もおろそかにできない、見えないものを感じるような。

犬の梅子ちゃんが、見知らぬ人々が来たので、びっくりしたのか、よく吠えていた。

梅子ちゃんの鳴き声が、いつまでも、帰り道にこだましていた。

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# by akikomichi | 2017-08-13 21:11 | 詩小説 | Comments(0)

「月蝕」

ハサミを入れる皮の入れ物の修理を個人でカバン作りをしている方に頼んでいた。

汗で皮が溶け出したようにしてできた穴が鋲よりも大きくなった。

地球を飲み込んだ影のように、ぽっかりとした見えない闇を作り出していた。

月を蝕うような闇が底なしの穴を作っていくような夜に、人工の小さな太陽の光を溜め込んだようなコンビニエンスストアで待ち合わせをしていた。

彼女はすでに来ていて、雑誌のところに立っていた。

私は、ハサミを入れる皮の入れ物の二つの穴を埋めた、新しい皮に縁取られた白いステッチが手縫いであることを教えて貰った。

柔らかい白い線に縁取られた二つの鋲は、銀色に光っていた。

彼女が、一つだけ打ち込む時に凹んだといった。

ハサミがあまり良く切れず、新しいハサミを手に入れたばかりだったので、ようやく、おさまるところを直してもらったのだから、それくらいのことはよしとした。

彼女の作る手作りの鞄も秋頃にはできるという。

一つ一つ形を作っていくことの喜びを知っている人は幸いである。

私は、茅葺の屋根を見るたびに一つ一つの茅の収まりどころを思った。

重なっていく茅の重みと竹の押さえ。

一つ一つの茅になったように、見続ける毎日を過ごしているうちに。

いつの間にか、私は茅葺の屋根になっていくような、茅葺そのものになっていくような気になってくる。

雨にさらされ、強い日差しにさされ、風を受けて、そこにいるのだ。

などと思いながら、明るすぎるコンビニを出て、真っ暗な山道を車で駆け登っていくと、異様に黄色く光る月が出ていた。

もうすぐだった。

夜中を過ぎてから、月蝕が始まるということを思い出していた。

地球の影と月が重なる時。

私たちは、それぞれ闇を孕んで向き合うように、月が闇に喰われてしまうのを恐れもせずに、そのまま、そこにいた。




















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# by akikomichi | 2017-08-08 02:10 | 詩小説 | Comments(0)

「稲の花」



稲も花が咲くときがあるのだという
稲の花は白いという
もう少しで花が咲くという
花が咲くとき雨風はない方がいいという
一つ一つの米に花が咲くとき
愛し合うといい
小さな実がつくとき
白い実を一緒に食べればいい


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# by akikomichi | 2017-08-01 19:50 | 詩小説 | Comments(0)

「今年の蛍」


久しぶりに散歩をした。
暗い夜道を歩いていると星がくっきりと見えてきた。
山の星は近くに見える。
しばらく歩いていると道端に
今年初めての蛍を見た。
この時期に見れるとは思ってもいなかった。
光っては消えていくほのかな明かりにつられて立ち止まった。
これからどうやって生きていけばいいのだろうか。
心の中で蛍に尋ねてみたくなった。
光っては消えていくほのかな明かりは
何も言わずにただそこにいた。



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# by akikomichi | 2017-07-31 22:42 | 詩小説 | Comments(0)

「最後の試合に」

高校生最後の剣道の試合に臨んだ倅であった

体が心を通り越して動くような

気持ちが重心になっているような

それでも体の動きは自由の中にあった

一人抜き

二人抜き

切り込んでいくその体は自由そのものであった

凄まじい風を作るような自由

生の喜びの中 動き回るような

あそこまで自由に動けるようになった倅の凄まじい努力を思うと

母は涙が自ずと出てきて止まらず

いい試合であった

面白い友と出会えて

良き師に出会えて

幸せな時をもらって

あなたが自分が生まれてきてよかったと思える時を

あなた自身が自分の力で作っていることに

心から感謝する




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# by akikomichi | 2017-07-28 17:34 | 詩小説 | Comments(0)

「そこが抜ける」

そこが抜けたのは、小走りで走った日のこと。

古い板に自分の足を飲み込まれた。

足が入った先には。

刻刻の刃の欠けた鋸のような真っ暗な穴が口を開いていた。

急いではことを仕損じる。

今日、その穴をふさいでいただいた。

焦らぬように、ゆっくりといこうという戒めのような新しいそこ。

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# by akikomichi | 2017-07-25 20:51 | 詩小説 | Comments(0)

「蛇の抜け殻」

蛇が茅葺屋根にいたという
大きな腹をしていたという
ことりがいなくなった
丸呑みにされたのだろう
街中のビルでは三、四階はあろう高い屋根の上に
蛇が息を潜めて生きている
ことりを狙って

蛇の抜け殻があった
死んだわけではないのだ
抜け殻になっただけである
その生身はきっと
どこかで生きながらえている

帰り際
小さな蛇が道を横切っていた
脱皮した蛇ではなく
魂だけの
まだ生まれたてのような
細く小さな体をくねらせて
草薮に消えていった




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# by akikomichi | 2017-07-20 01:24 | 詩小説 | Comments(0)

育ち盛り

坊主から のびた毛並みのツヤツヤと 育ち盛りの倅の髪の毛
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# by akikomichi | 2017-07-17 00:43 | 短歌 | Comments(0)

黒い子猫が道を横切った日
白鴉がスクリーンに映し出されて歌っていた
何かの萌しのように
白黒の子ヤギが道端の草を食んでいた
白と黒が混じり合う時
緑の恵みの時を迎えるように
大雨ののちの
嘆きの後の
小さな萌しを見るように
ただ
そこにあった



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# by akikomichi | 2017-07-09 18:52 | 詩小説 | Comments(0)

冬目 夏目

冬目がち 薄く濃く刻まれた時  夏目のようなあつさとともに
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# by akikomichi | 2017-07-08 21:11 | 短歌 | Comments(0)

夏目と冬目

白川村とほぼ同じ こて のことを、岐阜県揖斐郡(いびぐん)本巢町神海では ていた と言っている。
かい型で、材料は けやき である。
ここでは めなし と言って、こて型の表面を鉋をかけたりして正確な平面にして使用しているが、これにはわら縄巻かないというから、一段と精密な仕上げを期待している こて ということがわかる。
つまり、白川村のようにわら縄をまくと、能率的にたたけるが、それほど正確な平面性は得られないで、細かいでこぼこが残る。
めなし といわれるような正確な平面を持った板で叩き揃えれば、それなりに平面性も正確になる。
その代わりに縄のような滑り止めもつかないので、どうしても滑りやすく能率がよくなく、叩く力も余分なものが必要になってくるということになる。
この めなし も使用しているうちに板の 夏目 が減ってきて、自然と 冬目 が浮いてくる適度な滑り止めができるようになってくる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

※ 年輪を見ると交互に厚さの薄く色の濃い層と、厚く色の薄い層が綺麗に順番に重なっているのがわかる。
  前者を 冬目 といい、後者を 夏目 という。


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# by akikomichi | 2017-07-08 21:01 | 日記 | Comments(0)

「桜桃の味」を忘れてしまっていた。

アッバス・キアロスタミの映画。

死に場所を探して、死を下すものを探して回る男の話。

はげ山の坂道の途中に穴を掘って、そこに横たわる男。

そこから夜が更けていくのを眺めて、返事をしなかったら、穴に土をかけてくれるものを、朝まで待つために。

その嘆き。は、ひっそりと、生きているように見えながら、その実、死んでいるものを作る剥製屋が土をかけに来るのを待つために。


奥底に寝転がった「桜桃の味」の記憶を呼び起こすために。

現実の、嘆き続ける死よりも、桜桃の味を忘れないように、生きるように。

あの残されてしまった可愛い子に桜桃をあげたのかもしれない。

笹の葉が雨で揺れて、濡れて、滲んでしまった、七夕の短冊に書いた見えない思いのように。

生きて桜桃の味を忘れないように。

あの小さなリボンのよく似合う可愛い子が生き生きと生きるように。

甘い桜桃の味を忘れないように。





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# by akikomichi | 2017-07-07 21:21 | 詩小説 | Comments(0)

桜桃の味

桜桃の味を忘れてついえたの 穴を掘りつつ空を見る夜
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# by akikomichi | 2017-07-07 20:06 | 短歌 | Comments(0)

「蛇の疑問」

昨日のこと。

作業場にて、杉皮の束を作るために軽トラックの置いてあるところから杉皮の置いてある奥の方に歩いて行こうとしている時。

坂道の途中で、蛇が腹を見せて息絶えていた。

はてなまーくのように肢体を曲げて、全身全霊の疑問がとぐろを巻いているように、そこにあった。

はげしい雨が降り出した。

携帯からも、地域の放送からも、警戒警報が鳴り響いた。

子供の頃、父親の仕事の関係で暮らしていた、イランで初めて聞いた、イラクから爆撃機が飛んできた日の警報を思い出していた。

あの日は、蒸し暑かった。

夕方のことであった。

花火のように流れ落ちていく、赤い爆弾を初めて見た日。

人が死ぬことを前提にした、ミサイルの雨が花火のように点々と流れ落ちた日。

私たちは、何をしているのだろうか。

死ぬために生きているのだろうか。

生きるために生きているつもりで、心の奥そこでは、自分が死ぬのを、坂道の途中で、待っているのだろうか。

蛇は全身全霊で、死をもって、その疑問を形にしていた。










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# by akikomichi | 2017-07-06 08:37 | 詩小説 | Comments(0)

露柱 氷のけたに 雪のはし 雨のたるきに 露のふき草


屋根をぬう縄ははりなわというが、羽茂町小泊では、はりなわを作った後、はざに張って伸ばしておく。
使う時に伸びないように、伸びるだけ伸ばしておく。
水をつけたりすると効果があるという。
真野町浜中では庚申(かのえさる)の夜、てなわをより、とっておき、棟をくるむ時に使うと良いという。
その時、必ず水むすびにしなければならない。
角(つの)結びだといけない。火という字の形になるからという。
水むすびというのは、縄をまず花むすびにして、両方に輪を作った後、その輪にハサミを入れて切り離しておくことである。
これもひたすら、火を恐れての仕業ということができる。
佐渡では火を極端に恐れるところがある。
畑野町宮川では柱立て(建前)のことをすだちといい、これが済むとすぐ、昔は屋根葺きに入ったという。
ふきあがると棟に酒、するめ、昆布を供える。
するめは焼いたものはいけない。
屋根葺き道具も水という字の形に並べて供える。屋根に上がる供物は煮ても焼いてもいけない。
必ず生のものを備えなければならないばかりか、終わって下げた酒までもおかんしてはいけないという。
冷酒で飲まなければならない。
酒、供物、屋根葺き道具が備えられると親方(屋根棟梁)によって、

露柱 氷のけたに 雪のはし 雨のたるきに 露のふき草

と唱える。



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# by akikomichi | 2017-07-03 14:19 | 詩小説 | Comments(0)